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とにかく光は、素直に己の所業を詫びる。
「わかった。ヒカにはなにも言わないよ」
ようやく光は安堵して、その足で更衣室に向かおうとした。
「光! 待てよ。ごめん…俺、本当に悪かった」
急にしおらしくなった薮は、相当悪いと思っているようだ。
「そうだな。謝ることは大事だって昔に話したもんな…。でも、薮を許せるかどうかはわからない」
手首を掴まれる。
「待てよ。なぁ光、おまえは俺とのキスはいやだったか? 俺は、いやじゃなかった」
どういう意味だよ!
なんとかして身を離そうと躍起になっているのに、こういうときの薮は妙に力が強い。
「どうして? なんでそんなこと言うんだよ! 薮はヒカが好きなんだろう?」
違うのかよ!
「好きだよ。でも、ヒカには…こんなふうにならなかった」
「え…?」
「力でねじ伏せて屈服させて、俺の下でめちゃくちゃにしてやりたい。そう思うのは、いつだって光なんだ…」
嘘だろう?
あぁ…薮は、なんてことを言うんだろう!
急に心臓がわめきだす。
奇天烈な言い訳に激高して、光の頬が真っ赤に染まった。
薮にしてみれば、それがすべての答えであって、今までの答え合わせだったのに。
「……薮っ!」
これ以上ここにいたら、なにかが壊れる気がして、光はきびすを返す。
とにかく今は、ここから逃げなければ…。
そう思った。
階下から聞こえるシャワーの音で、ヒカは目を覚ました。
「あれ、ここ…俺のベッドじゃないけど…どこだっけ?」
自分の身体に掛けられた、羽毛布団の高級そうなやわらかさと軽さに違和感を覚える。
部屋の中を見渡すと、星座の写真が飾られ、他にもたくさんの写真が壁にかけてある。
「そうだ。俺は今日の夕方、風邪をひいたゆうとの家に看病に来たんだったよな」
机の上にある写真には、ヒカと裕翔が肩を組んで映った、懐かしい写真があった。
「いつの間に寝ちゃったんだろう?」
ヒカは一気に、さっきまでの事を思い出した。
今日の夕方、薮家のメイドのバイトを光に交代してもらい、熱を出した裕翔の家に看病にやってきた。
久しぶりに訪れた裕翔の家は、丘の上にある富裕層の住宅街にある。
子供の頃は何度かお邪魔したことがあったが、自分が場違いな気がしているのを察して、裕翔の両親はとても温かく接してくれた。
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ねね子(プロフ) - しろくまさん» 最初から読み返してもらったなんて嬉しいけど恐縮。ありがとうございます! 誤字脱字などすでに色々直したい所が山盛りなのに放置してるの恥ずかしい(笑)次回作のオメガ光くん、色々と萌えを練り込みながら楽しんで書けたらなと思ってますo(^-^) (2019年3月18日 23時) (レス) id: c981404cfd (このIDを非表示/違反報告)
ねね子(プロフ) - 藍さん» こちらでもありがとうございます。後日談もすごく書きたいのですが、まずはジゴロを終わらせないとですね(汗)でもありがとうございます。藍さんの作品も今読ませてもらいましたよ♪作品、頑張って下さいね(@^▽^@)/ (2019年3月18日 23時) (レス) id: c981404cfd (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - ねね子さま、完結おめでとうございます。最初から読み返してやはりねね子さまのやぶひか最高…と悶えています。ゆと君も可愛かった…。甘くて苦い、初恋にふさわしい素敵なお話でした。いつもながらありがとうございます。新連載も楽しみにしています(#^.^#) (2019年3月18日 19時) (レス) id: 58687bcc1e (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - 初コメ失礼します!まず、完結おめでとうございます。作中ずっとニヤニヤしながら読ませていただきました。(後日談みたいな、続編も見てみたいなんて……)これからも執筆頑張って下さい♪ (2019年3月18日 8時) (レス) id: df207c3009 (このIDを非表示/違反報告)
ねね子(プロフ) - しろくまさん» ありがとうございます(*^▽^*)/ このあとはピッチを上げて、ラストまで突っ走ります。でもそろそろ新しいお話書きたくなってるけど、最後まで頑張りますね(笑 (2019年1月23日 14時) (レス) id: c981404cfd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねね子 | 作成日時:2018年11月9日 23時