15 真夜中のプールで… ページ15
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ヒカは少し考えてから、光に提案をしてくる。
「なら、光が俺と代わって? お願い。ゆうとは俺の大事な幼馴染みなんだよ」
ここまで不安そうなヒカを見るのはめずらしい。
「でも、そんなの規則的にダメだろう? 薮家に雇われてんのはヒカなんだし」
「そうだよね。俺、やぶ本人に雇われてんじゃないもんね。だったら…なぁ光、俺のフリをして今日だけバイトに出てよ。絶対わかんないって、顔も声も、髪型もそっくりなんだから」
光は目を見開いた。
「やだよ。無理だって」
「俺、ゆうとが心配なんだ。お願い…光」
絶対薮にバレる気がしたけれど、あまりに必死なヒカの様子に、光はそのお願いを断る術を失ってしまう。
「わ、わかったよヒカ………なら、服を交換しようか」
ヒカの里親は共働きで、里親制度の援助金を利用するくらい生活に困窮していた。
だからいつもヒカはお腹を空かせていた。
小学六年になる頃には両親は家でしょっちゅうケンカをするようになって、居場所がなくてよく近くの公園に遊びに行っていた。
そこで出会ったのが三つ年下の裕翔だ。
裕翔はなんでもはっきり発言する性格のせいで、友達関係がそれほど上手くいっていなかった。
公園にはバスケットボールのリングがあって、よくそれで二人で遊んだ。
裕翔の家は裕福で、家にあるおやつをたくさん持ってきてくれて、いつもベンチで半分こして食べたことをヒカは今も感謝している。
中学三年生の時、裕翔が友達とトラブルになった。
あまりに落ち込んでいる姿が本当に可哀相で、ヒカはいつもの公園でいろんなアドバイスをして励ました。
それでも裕翔は沈んだままで…。
「なぁゆうと、元気出せって。俺が言ったことを実践していけば、きっと世界は一変するって!」
「うん…でも、なんか今は元気が出ない」
ヒカは考える。
「あのな、途方に暮れた時はさ、どうしたら浮上できるか知ってるか?」
「知らないよ。そんなのあったら教えてよヒカ」
ヒカはこれまで何度もつらい思いをして生きてきたから、そういった術をいやでも身につけてきた。
「俺の解決法はこれ一択。まず、小さなことから成し遂げること」
「え? どういうこと?」
「ゆうとが今、身近でさ、やってみてくて出来ないことってある?」
しばらく考えて、答えがぽつりと落ちた。
「夜の学校のプールで泳ぎたい…」
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ねね子(プロフ) - しろくまさん» 最初から読み返してもらったなんて嬉しいけど恐縮。ありがとうございます! 誤字脱字などすでに色々直したい所が山盛りなのに放置してるの恥ずかしい(笑)次回作のオメガ光くん、色々と萌えを練り込みながら楽しんで書けたらなと思ってますo(^-^) (2019年3月18日 23時) (レス) id: c981404cfd (このIDを非表示/違反報告)
ねね子(プロフ) - 藍さん» こちらでもありがとうございます。後日談もすごく書きたいのですが、まずはジゴロを終わらせないとですね(汗)でもありがとうございます。藍さんの作品も今読ませてもらいましたよ♪作品、頑張って下さいね(@^▽^@)/ (2019年3月18日 23時) (レス) id: c981404cfd (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - ねね子さま、完結おめでとうございます。最初から読み返してやはりねね子さまのやぶひか最高…と悶えています。ゆと君も可愛かった…。甘くて苦い、初恋にふさわしい素敵なお話でした。いつもながらありがとうございます。新連載も楽しみにしています(#^.^#) (2019年3月18日 19時) (レス) id: 58687bcc1e (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - 初コメ失礼します!まず、完結おめでとうございます。作中ずっとニヤニヤしながら読ませていただきました。(後日談みたいな、続編も見てみたいなんて……)これからも執筆頑張って下さい♪ (2019年3月18日 8時) (レス) id: df207c3009 (このIDを非表示/違反報告)
ねね子(プロフ) - しろくまさん» ありがとうございます(*^▽^*)/ このあとはピッチを上げて、ラストまで突っ走ります。でもそろそろ新しいお話書きたくなってるけど、最後まで頑張りますね(笑 (2019年1月23日 14時) (レス) id: c981404cfd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねね子 | 作成日時:2018年11月9日 23時