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「なら、今日はこのまま夕食の調理をするね。できたら呼ぶから、やぶは好きにしてて」
「手伝おっか?」
「なに言ってんだよ。これは俺のバイトなんだから、仕事を取らないでよね。でもありがと♡」
「わかった。なら俺は二階の自分の部屋にいるから」
一時間後に呼ばれた薮がダイニングに降りてくると、長テーブルには湯気の立った料理が並べられていた。
それはなかなか手の込んだフレンチで、薮の予想を遙かに超える出来映えに驚く。
「お待たせしました。鴨のコンフィと野菜のタラトゥイユ。あとはエビのビスクスープだよ」
「すごいな…マジで驚いた! ヒカがこんなに料理が上手かったなんてな」
料理は得意だと言っていただけあって、いい匂いだし目にも美しい。
「俺、高校の時から三年間、フレンチレストランでバイトしてたんだ。日本でも有名なシェフ、ジェエル・ロブションの息のかかったお店だったんだ。さぁやぶ、熱いうちに召しあがれ」
「さんきゅ。なぁ、ヒカも食べろよ」
「俺はいい。弁当持ってきてるからね。あくまで俺はバイトなんだからそこはちゃんと線引きしなきゃね」
ヒカは可愛いだけじゃなく、本当に常識があって好感が持てた。
「わかった。なら、いただきます!」
そのあと、薮は上手い上手いと連呼しながら料理を平らげた。
ヒカが洗い物をしていると、
「九時をまわったな。光、もうそろそろ家に帰ってるかな?」
そんなつぶやきが聞こえて、薮が携帯を取り出した。
「なに? やぶは光のこと、そんな気になるの? なんかやぶ、光のお父さんみたいだね?」
「あいつ、いろいろ危なっかしいんだよ。いつも俺がついてないと簡単に人に騙されたりするから心配なんだ。まぁ、確かに親みたいなもんかな?」
「ふぅん」
薮が光を気にかける時、ヒカはいつも密かにため息をついてしまう。
二人の間には、自分には到底及ばない絆があるように見えるからだ。
薮がしつこく電話を鳴らすと、二十回ほどのコールのあとで光が応じた。
『なんだよ薮。今、電気屋さんで光学レンズを選んでるんだから邪魔しないでくれよ。じゃあな』
「おい、切るな光!」
結局、通話は切断されてしまい、薮はいまいましげに舌を打った。
「ねぇやぶ。訊いてもいい?」
「ん? どうしたヒカ?」
「やぶはさ、光のこと…そういう意味で好きだったりする?」
「え……?」
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ねね子(プロフ) - しろくまさん» 最初から読み返してもらったなんて嬉しいけど恐縮。ありがとうございます! 誤字脱字などすでに色々直したい所が山盛りなのに放置してるの恥ずかしい(笑)次回作のオメガ光くん、色々と萌えを練り込みながら楽しんで書けたらなと思ってますo(^-^) (2019年3月18日 23時) (レス) id: c981404cfd (このIDを非表示/違反報告)
ねね子(プロフ) - 藍さん» こちらでもありがとうございます。後日談もすごく書きたいのですが、まずはジゴロを終わらせないとですね(汗)でもありがとうございます。藍さんの作品も今読ませてもらいましたよ♪作品、頑張って下さいね(@^▽^@)/ (2019年3月18日 23時) (レス) id: c981404cfd (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - ねね子さま、完結おめでとうございます。最初から読み返してやはりねね子さまのやぶひか最高…と悶えています。ゆと君も可愛かった…。甘くて苦い、初恋にふさわしい素敵なお話でした。いつもながらありがとうございます。新連載も楽しみにしています(#^.^#) (2019年3月18日 19時) (レス) id: 58687bcc1e (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - 初コメ失礼します!まず、完結おめでとうございます。作中ずっとニヤニヤしながら読ませていただきました。(後日談みたいな、続編も見てみたいなんて……)これからも執筆頑張って下さい♪ (2019年3月18日 8時) (レス) id: df207c3009 (このIDを非表示/違反報告)
ねね子(プロフ) - しろくまさん» ありがとうございます(*^▽^*)/ このあとはピッチを上げて、ラストまで突っ走ります。でもそろそろ新しいお話書きたくなってるけど、最後まで頑張りますね(笑 (2019年1月23日 14時) (レス) id: c981404cfd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねね子 | 作成日時:2018年11月9日 23時