日々樹渉のお師匠様 ２

４７（五日目） ページ15

木曜日。





雨が降る。




ただでさえ暗い気持ちが暗いと言うのに、とA先生はひそかに溜め息を吐いた。






しかし、ふと見た窓の風景に笑いがこぼれた。






窓の外には深海奏汰が雨に打たれながらくるりくるりと踊る。




その深海奏汰を流星隊が必死に追いかける。








いつものこの時間は太陽よ日によって弱っている吸血鬼たちも活発だ。









A先生がしばらく窓の外を眺めていると、雨が弱まった。






とても小さな雨粒が細かく振る、霧雨だ。






そして青空が顔を覗かせた、顔を生徒から空へ向けるとうっすらと虹が架かっていた。






蓮巳「ん？A先生、どうしましたか？」





通りすがった蓮巳が、空を見上げて微笑んでいるA先生に声をかけた。





『蓮巳くん、ほら、虹が架かってる。』





蓮巳「本当だな、虹、好きなんですか？」





『そうだね、好きだよ。ただの雨粒の光の反射が好きだ。
星も好き、ただの大きな岩の光の反射が。
元は綺麗とは言い難いものも、そうじゃないものも。沢山好きだよ。』





蓮巳「屁理屈っぽいこと言うんですね、英智みたいに。」





『意外かい？』





蓮巳は少し考えてから「はい」と答えた。




『そっか〜。
でも、マジックも虹や星と同じでしょう？
種を知れば綺麗でも、凄くもない。
でも、それが私は好きなんだ。』








そう言ってA先生は笑った。







蓮巳は、そのいつもの完璧な笑顔に違和感を覚えた。





蓮巳「A先生。」





『ん？』





蓮巳「A先生は、何かなやんでたり、困ってたりしてるんですか？」






A先生は、答えずにただ笑った。

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