キ ミ ノ カ ケ ラ

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「またね〜」



タクシーの窓から手を振る健が遠ざかっていった


鍋を食べてる間は盛り上がったけど、食べ終わった後は明日も仕事があるので二人してさっさと店を出た


振っていた俺の手も振る相手を失ってダランと垂れ下がる





『Aとよく話して？』





その言葉の通りに俺はポケットからケータイを取り出す


マネージャーや健からの無視した着信履歴をかいくぐって


あの日のまま未登録の番号を探し当てた


店の前で11桁の数字を指でなぞっていたら


突然チリンチリンとベルを鳴らしながら突進してくる自転車



(おわっ、ぶね…)



間一髪の所で避け、もう一度画面に目を落とすと


“発信中”の文字



(嘘だろ？！)



慌てて耳に当てると規則正しい機械音が聞こえてくる


そわそわしている自分を馬鹿に出来ないほど俺は焦ってた


すると、コール音が途切れて静寂が広がる







「…もしもし」







透き通った声が耳の奥を刺す




「もしもし、森田です」




声が震えているのが自分でもわかる




「どうか、しましたか…？」




勢いで電話を掛けてみたけど、何て言ったらいいんだろう


何でもない、なんて今さら言えなくて




「話したい事があって」




いつかの彼女と同じような事を言った

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