◯ ページ43
α国から通信を途絶えさせ一年、俺はα国の鎖から抜け出した。
スパイも全員捕まって、誰も俺を寝返ったと報告する者もいない。
死んだと思ってくれればいい。
そう思っていた。
α国の総統が直談をしに来ると聞いたとき、心臓がはねた。
バレるかもしれない、合わないように気をつけようとしていた。
だが運は俺には向いていなかった。
眼の前には見覚えのある大きな体型と、醜く濁った目、二人の屈強な兵士
すぐにわかった。
頭を下げて震える手を背に隠し、すれ違うのを待つ、怖い、冷や汗が滝のように流れる。
「ああ、我々国の方頭を下げてくれるな
歓迎感謝するよ」
俺を散々こき使い、駒にした王は、俺の事を一切覚えていなかった。
遠ざかる背中を見送りながら、俺は俯いてしまう。
気づかれないのは良かった。
あの国に未練も何も無いが、覚えられていると厄介だ。
でも、なんでやろ…
「俺は…っほんまに捨て駒やってんな…!」
壁にもたれ、ズルズルと座り込む。
脱力感が、俺を襲った。
少しだけ期待していた、俺が必要だと言ってくれることを、いくら虐げられていたとはいえ、幼い頃から親と共に見てきた人だったから…
「たった一年…」
俺はあの人にとって、たった一年で忘れ去られてしまうような小さな存在だった。
いや、ただの使い捨ての駒だった。
未練など無いというのに、涙が止まらない…!
「どうかされましたか…?」
不安げな声が俺にかけられる。
メイドだろうか、俺は頬に垂れる涙を拭って、立ち上がる。
案の定メイドの娘が俺を心配そうに見ていた。
「すみません!邪魔ですよね!」
顔を見られぬうちに立ち去ろうとすると、メイドの娘は俺の手を掴んで立ち去ることを阻止する。
「え…?」
「すっすみません!!幹部様にこんな事を!!
アッ名乗ってませんでしたね!!私はリテア・フェアラートと申します!!
あのこれ!良かったら使ってください!!
新品です!!」
頭を深々と下げて刺繍の施された白いハンカチを差し出してくれた、リテアさん
俺は少し迷った末、差し出されたハンカチを受け取った。
「わ、私で良ければ、お話お聞きしますよ…?」
俺の顔色をうかがうように、おずおずと言う彼女の顔は、俺を少し怖がっているようだった。
でもその眼差しの中には優しさも、心配も混ざっている。
「…おん…聞いてくれる…?」
俺より30センチほど背の低い彼女に、弱い部分を見せてしまう。
どこか、懐かしい気持ちになったのは、気のせいだろうか…。
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#私があめです(プロフ) - 夢主ちゃんに感情移入しちゃって胸が苦しい……更新応援してます！ (2020年8月21日 23時) (
レス) id: ab2c2384be (このIDを非表示/違反報告)
すいれん - そっかぁ...忘れられちゃってるのかぁ...あれ？目から塩水が... (2020年8月1日 23時) (レス) id: 94909bedb8 (このIDを非表示/違反報告)
弥生夏(プロフ) - ・ちょこみんとさん» 神だなんて、ソコまで評価していただいてとても嬉しいです。この作品がもっと好きになれるよう、私も頑張って文才を絞り出しますので、よろしくおねがいします！更新がんばります！応援ありがとう御座います！！それでは！ (2020年7月30日 14時) (レス) id: 2f1398aac7 (このIDを非表示/違反報告)
・ちょこみんと - 今更この神作品を見つけて一気見させて頂きました。第一章は感動で目から塩水が溢れ出ました。第二章はとてもホワホワしながら読ませて頂いています！神作を作り出してくれてありがとうございます！大好きです！これからも更新頑張って下さい！応援してます！ (2020年7月30日 13時) (レス) id: c2be3e9c79 (このIDを非表示/違反報告)
弥生夏(プロフ) - あーる@さん» 大好きなんて…！ありがとう御座います！！めっちゃ嬉しいです！！さらっと読まれてる…！！お主やりおるな…！！これからもがんばります！！ (2020年7月26日 17時) (レス) id: 2f1398aac7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：弥生夏 | 作成日時：2020年7月23日 14時
