ゾル家の眠り姫2【イルミ】 (ページ5)

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カメラは全て破壊したはずだ

屋外にまでカメラを設置していない限りはイルは私を直接監視するはず

目を閉じ、神経を集中させる

風向きと匂い

草木の不自然な音

―――サクッ

―――パキッ

―――カラカラ

『見つけた』

後方

7時の方向

イルミの体重は約68キロ

木の上から降りてきたのか着地の時の音が明らかに動物のそれより重かった

風が吹くタイミングに合わせて音を被せては来ていたけど

この9年間、視界が閉ざされた空間で

音のみを聞いて生きてきたのだ

足音だけで誰がどの方向からどのくらいの速さで近寄ってきているかまで把握できるようになった

『イル』

その喉元に、クナイをあてがう

「あーあ

見つかっちゃったね」

“見つかっちゃった”

なるほど

まだ捕まってはいないと言いたいのか

次の瞬間、首元に伸びている私の腕にイルミの手が伸びた

ギリギリと私の腕を締め付ける

握っていたクナイを放し、反対の手で取るとそのまま彼の足に刺した

しかし刺したくらいでイルミの動きは鈍くはならない

イルミの手が服に刺さった針を抜くのが見えた

俯く私の後頭部に向かって針を持つ腕を振り下ろす彼

足に刺したクナイをそのままにイルミの腕を止める為、腕を伸ばす

止めることには成功したものの、力では叶わないようで

じわじわと少しずつ、針の先が迫る

あと数センチで私の眉間に届く

少しずつ、イルミの力に押し負け倒れていく

『っく、』

「どうしたのA

これじゃあオレを捕まえるなんて無理だね」

彼はどこか楽しそうだ

『降参

もう少し手を抜いてくれてもいいじゃない』

いまだギリギリと迫ってくる針に

Aは小さなため息を着く

「それじゃあ面白くないだろ？

この針にはね

嘘が付けないように念を込めてあるんだよね

これでAも少しは思う通りになると思うんだけど」

プチッと皮膚を貫く音がした

まずい

『マリア』

ズズっとAのオーラに包まれて出てきたのは真っ赤なベールを被った女性

「ああ！それはオレにも使えるのか」

ベールの色をみたイルミが飛び退く

危ない

間一髪だった

私の額から鼻筋にかけて、一筋の赤いラインがひかれる

「治さないの？」

彼の視線の先には、先程まで強く握っていた私の腕は折れておかしな方向に少し歪んでいた