ゾル家の眠り姫2【イルミ】 (ページ21)

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「顔ね・・・」

イルミはターゲットの写真を私の顔の横に持ってきて見比べる

「・・・そうでも無いんじゃない？」

『そう？』

彼は私の手を引き鏡の前まで連れていき、自身の顔を私の顔の横へ

写真を反対側へ持っていくと

「ほら」

と一言

「オレたちの方がよっぽど綺麗だろ？」

『・・・』

「Aより綺麗な女なんて見た事ないからね」

こんな甘い言葉を平気な顔で淡々と言えるのは、きっとどこを探しても彼だけだろう

―――チュ

『ありがとう、イル』

リップ音を合図に彼の手がAの腰へ伸びる

『イル？ちょっと、仕事の時間が・・・』

すぐ後ろには大きな鏡

目の前には、陶器のような白い肌に整った顔

『私も』

吸い込まれそうな程大きな黒い瞳

『イルミ程、暗闇が似合う男性は見た事ない』

「・・・それ、褒めてる？」

『最高の褒め言葉でしょ？』

愛しい彼の顔が近付く

2人は目を閉じ、何度も唇を重ねる

家を出る時間が迫っているのは分かっている

でも、彼の口付けは

その乏しい表情とは裏腹に

甘く、優しく

深く、力強い

私の意識の全てが彼に染まっていくような

癖になりそうな感覚に溺れていく

―――ピリリリリリ

家を出る時間を知らせるアラームだ

「・・・行こうか」

『うん』

―――――

「いい？やばくなったら呼びなよ？」

『ねえ、私子供じゃないの』

「呼びなよ？」

『・・・』

「呼びなよ」

『ヤバくなったらね』

私の返答に満足したのか、彼は私から離れていった

建物内に入るとエレベーターで最上階へ

ここでの衣装は決まっている

ロッカールームで真っ白い生地にゴールドの金具の着いた服に着替えを行い、会場へ

時間通りに来たはずなのだが

そこではもう既に何組かのペアが成り立っており

そこにターゲットであるシャロンの姿は無かった

これから来るのか、既に誰か連れ込んだか・・・

後者だったら厄介だ

もしそうなら、家に乗り込み暗殺する他ない

それには幾重にも張り巡らされたセキュリティを抜けなければならないのが手間だ

どちらにせよ、まだ時間には早い

Aはテーブルに並んだクラッカーに手を伸ばした

「貴女、綺麗な指してるのね」

ターゲットではない

・・・が

『指、ですか？』

「私、指が細くて綺麗な子が好きなの」

どう？と指を絡ませる女性

『では、一緒にいかがですか？』