ねむれる王子とおめざ姫

六歩 ページ28

。。。。。。





樹が帰宅すると・・・



パン♪パン♪パパ――ン！！



いくつものクラッカーの破裂音


そして



「 樹、コンペ優勝おめでとう！！ 」×３



瑠と両親が笑顔でお出迎えです



「 今夜はお祝いよ 」


「 母さん 」


「 優勝料理の写真・・・ 」


「 後で見せるよ、父さん 」


「 驚いた？ 安井さんの秘書さんから連絡が来たんだよ 」


「 瑠？ ああ、あの・・・ 」



トレードマークの大顔面を思い出す樹



「 ありがとう 」


「 早く食べよ！ お母さんがご馳走作ったんだよ 」



樹の手を引っ張り、ダイニングに向かう瑠


樹は前を歩く妹の耳に唇を寄せて、


『 お守りサンキュ 』と囁きました



「 ひゃっ！！ 」



驚いて変な声をあげてしまう瑠


そんな娘に『 おかしな子ねぇ 』と母がつぶやきます


原因を作った樹はニカッと笑って知らんフリです



「 もう・・・ 」



真っ赤になった瑠が、少しだけ樹から距離をとります


４人で食卓を囲み、


コンペの様子や、実は理事長だった謙太郎の話題になり、会話が途切れることはありません


ですが・・・



「 ・・・パリへはいつ行くんだ？ 」



無言で話を聞いていた父が、突然口を開きました



「 お父さん、パリって？ 」


「 さっき優勝を知らせてきた深澤さんが言っていた

　 お前、安井さんにすぐ留学させてくれって言ったらしいな 」


「 ・・・うん 」


「 じゅ、樹、『 Ｙ・Ｃ・Ｓ 』の卒業は？ 」



瑠が質問します



「 学校推薦でスイーツ留学するんだから、

　 在学期間中での渡仏でも、出席扱いで卒業できる

　 俺、実践力をつけたい。 本場の一流店で修業したいんだ！ 」


「 なぜそんなに急ぐの？

　 あなた、卒業後はウチで修業するって言ってたじゃない 」



母は樹の気持ちの変化に驚いているようです



「 俺、知っちゃったから・・・ 」





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