ただ傍にいて (ページ5)

今日:3 hit、昨日:1 hit、合計:14,961 hit

ある夕方ページ5

「お前にだけは言ってたんだったか。
そう。俺ァ今、『ヒーロー狩り』怪人として名を挙げている最中なんだよ。」

どこか誇らしげな表情と手振り。
そうか、ガロウはあの日からちゃんと、夢の実現を見据えていたんだ。
いま正に、夢を叶えている途中なんだ。

「良かった…叶えられてるんだね、夢。
なんかそれ聞いたら嬉しくなってきちゃったな、へへ」
「お前…怖がらねェのか？俺ァ怪人になろうとしてんだぜ。ヒーローを狩って」

今度は呆気に取られたような顔で私を見る。
表情豊かで若いなあ。
あんな前々から夢を知っているのに、今さら怖がる訳ないだろう。

「私を何だと思ってるの？好きだって言ってるのに、怖がってどうすんのよ。
それに、ガロウの夢はそんなに浅くないからね。」

しまった、少しムキになったらまた要らんことを口走った。

「ッハハ！そうかよ、随分好いてもらってんなァ」
「…そうだよ」

いつまでも飄々とした態度を崩さないものだから、わざとらしく拗ねてみる。
するとガロウの鋭い目許は一気に緩み、一人の青年としての彼が姿を見せたように感じた。

「まあそう拗ねんな。
俺も、あん時からAが好きだよ。」

たった一つしか歳は変わらないのに、とても大人びて見える彼の大きな掌が、私の頭をひどく優しく撫でた。