王様と王子様と女神様３

質問 ページ2

平野side


「ねぇ、キスシーンの前にやっておいたほうがいいことってある？」


瀬戸ちゃんの質問によって、楽屋の時が止まった。


「ぶほっっ」


「ちょっ、岸くん汚い！」


岸くんが飲んでた水を吹き出したことで時が再開。

そして、横にいた玄樹と海人は立ち上がって避難する。


「あっ、サッセンっサッセン！」


運良く衣装にはかからなかったけど、机と床はびしょ濡れ。


あーあ、岸くんやっちゃった(笑)


「もぉー、岸くん！」


「サッセンっ、なんかあれっ、拭くもんない！？」

岸くんが机を拭こうとしてるけど、雑巾なんてないので机の前であたふた。


雑巾、借りてこななぁ。


そう思った俺は、楽屋を出ようとしたら


「はい、雑巾」


「おわっ、瀬戸ちゃん！？」


雑巾を持った瀬戸ちゃんが楽屋に入ってきた。


「えっ、はっ、いつのまに？」


「今、借りてきた」

驚きで固まっている岸くんに雑巾を渡したら、瀬戸ちゃんももう一枚の雑巾で机を拭いてく。


さっきまで楽屋おったよな！？

借りてくんの早すぎやろ！？

瞬間移動でもしたんか！？


驚き通り越して、感心しまう俺。


「瀬戸ちゃんってほんま、誰にも気づかれずにいなくなるよな」


「そう？なら、私の影が薄いってことだよ」

机を拭き終わった瀬戸ちゃんが床を拭きながら言う。


「影薄いっていうか、自分から消してるんちゃうん？」


廉がそう言うと、んーどうなんだろ、と首を傾げる瀬戸ちゃん。


瀬戸ちゃんは、めっちゃ感覚派。

考えるより感じろ！で、体が勝手に動いてまうタイプらしい。


あと、人の気持ちには敏感なのに、自分の気持ちにはめちゃくちゃ鈍感さん。

俺らが気づいたときには心がボロボロで、限界を越えているパターンがよくある。


ぱっと見、強そうに見える瀬戸ちゃんやけど、精神的にはかなり脆くて


そんな瀬戸ちゃんのことを一番気にして心配してるのが、意外と廉やったりするんよな。


「ま、ていうかさっきのは瀬戸が言うタイミング悪過ぎたしな」


瀬戸ちゃんに対して、毒気たっぷりなのも心配の裏返しやったりする。

素直になればいいのにと思うねんけど、廉、意地っ張りやからな(笑)


「岸くんごめんね」っと廉の言葉を素直に受け取る瀬戸ちゃん。


「いいって、これは俺の責任だからっ」


なぁ岸くん、瀬戸ちゃんが拭いた場所をもう一回拭いてどうするん？(笑)

キスシーンとは→←軽くプロフィール

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す