暮春、君との約束。�� ページ7
伊野尾side。
それは突然なことだった。
もう少しで小学校を卒業するという時期。
夜遅く、仕事から帰ってきたお父さんに起こされダイニングテーブルの椅子に座らされた。
「なあに？眠いんだけど...。」
まだ寝ぼけた顔で椅子に座っていると、お父さんが深刻そうな顔をして話した。
「慧...よく聞いてほしい。」
「なに？」
「仕事に関係で外国に行くことになった。」
本当に突然すぎて頭が真っ白になる。
仕事なんだからしょうがないって気持ちと、なんで行かないといけないのという気持ち。
複雑だった。その日から俺の家は慌ただしくなって、学校に行くことも少なくなった。
「慧。スズランテープと油性ペン買ってきて。」
「わかった。」
俺とは違い、荷造りで忙しいお母さんの代わりで、買い物に行った。
お使いなんてもう慣れていたけど、いつも俺の隣には薮がいたから、少し心細い。
そんな気持ちが伝わったのかな。そんなことはあり得ないけど、
「伊野尾！」
そう呼ばれた先には、サッカーの習い事帰りの薮がいた。
「すごい久しぶりな気がするな。」
「そうだね。」
「でも元気そうでよかった。風邪こじらせたのかと思ってた。」
俺の頭をなでながら笑う薮。いつか話さないといけないのに、今話すのはなんだか気が向かない。
それでも早くいってしまった方が...。
「やぶ...。」
「ん？」
「俺ね...引っ越すの。外国に。」
買ってきたものが入っているビニール袋を握りしめ言う。
薮は目を見開いて驚いていたけど、笑い俺の手を引いた。
「そっか。...今暇だろ？ちょっと寄ってこうぜ。」
「えっ、暇じゃ...ないけど。」
「大丈夫。送ってやるから。」
拒否させないようというように、走り出す。
そんな薮に惹かれ連れてこられたのは、よく遊んでいた丘の上だ。
「いつか大人になって、帰ってきたらさまた一緒にこよう。...大学はいるから、ちょうど10年後だな。」
「10年後？」
「あぁ、これは俺と伊野尾の約束だ。」
「...うん！」
夜景がきれいなその丘で笑い合った。またここで会えることを信じて。
「じゃあね。」
「ばいばい。」
この日、家まで送ってくれた薮は手を振った後、自分の家に向かって歩いていく。
帰り道泣きながら。
。
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猫チャロ(プロフ) - サクラさん» ありがとうございます。ボチボチ、頑張りますね。 (2017年2月28日 3時) (
レス) id: 1b288ff388 (このIDを非表示/違反報告)
猫チャロ(プロフ) - はるさん» ありがとうございます。 (2017年2月28日 3時) (レス) id: 1b288ff388 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - チャロ君!!楽しみにしてました！これからも頑張って下さい!!お話しとても面白いです！ (2017年2月26日 6時) (レス) id: d7def24883 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 新作楽しみにしてました！どのお話もとても面白いです！ (2017年2月25日 22時) (レス) id: a3cc4ec245 (このIDを非表示/違反報告)
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