39 ページ41
未だ立ち上がれない私達をよそに、ブラックたちの話はするすると進んで行った。
スキャバーズがあまりにも長生きなこと。前足の指がなく、ピーターが亡くなった時、指だけが残骸として残っていたこと。そして、真にポッターの両親を裏切ったのはピーターで、ブラックは彼を追い詰めたこと。
全てが全く逆の話だった。
教授はただ呼吸を繰り返して、彼らの話を聞いていた。
ブラックとルーピン先生が意を決して、ネズミに杖を向けると、ネズミはみるみるうちに小柄な男に変化した。
横から息が詰まるような音が聞こえた。
「ピーター、お前はヴォルデモートの昔の仲間から逃げ隠れしていたのだろう？だからネズミの姿に12年もなっていた。」
「シリウス、リーマス…。」
「おまえは、ジェームズとリリーが死ぬ一年も前から、あの人に密通していた！友を裏切るくらいなら死ぬべきだった。我々も君のためにそうしただろう」
ブラックは長年溜めていたであろう怒りをピーターにぶつけた。
そして、ブラックとルーピン先生はピーターに並び立った。
さらばだ、ピーター。そう小さく声が聞こえた。そして2人は杖を振り下ろした。
「やめて！殺してはダメだ！」
そこに、ポッターの声が響いた。2人は戸惑ったように彼を見た。
「ハリー、このクズのせいで、君は両親を亡くしたんだぞ」
ブラックは憎らしげにピーターを見ながら唸った。
「わかってる。こいつを城まで連れていこう。僕たちの手で吸魂鬼に引き渡すんだ。こいつはアズカバンに行けばいい。」
ルーピン先生はピーターを呪文で縛り付けたあと、私たちの元へゆっくりとした足取りでやって来た。先程よりはクリアになった頭で彼へ目を向ける。
「A、セブルス、大丈夫かい？」
『まあ、なんとか。私達のことはいいので、ピーターを優先してください。』
ルーピン先生は私の言葉を聞くと、少しだけ眉を下げて、分かったとピーターのもとへ戻っていった。
私が立ち上がろうと力を入れた時、脇の方に手が入れられ、上にぐい、と引っ張られた。
『…教授。』
「捕まっていろ。」
自分のことで精一杯だろうに。彼は彼自身の心情よりも、生徒である私の無事を心配していた。なんて、酷く優しい人なのだろう。
私は教授の体に寄り添う形で部屋を出て穴をおりて行く。
彼は今何を思っているのだろう。
そんな言葉は口に出せずに、ただ口から空気だけが漏れた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 188人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
猫田(プロフ) - ななおさん» ありがとうございます！コメント本当に励みになります。これからも面白いと思って貰えるようなお話かけるよう頑張ります！ (2月21日 1時) (
レス) id: 922d1d8c49 (このIDを非表示/違反報告)
ななお - アズカバンの囚人までお疲れ様でした‼︎毎回面白くて楽しく読ませてもらってます。これからも作者様のペースで頑張ってくださいね (2月21日 1時) (レス) id: cf12d55d58 (このIDを非表示/違反報告)
猫田(プロフ) - ななしさん» ありがとうございます！お休みでフレッシュした分1層頑張ります (2月18日 14時) (レス) id: 922d1d8c49 (このIDを非表示/違反報告)
ななし - お疲れ様です😆🎵🎵気長に❤️ (2月14日 8時) (レス) @page41 id: 9b994bebe6 (このIDを非表示/違反報告)
猫田(プロフ) - みぃさん» 嬉しいです！ありがとうございます (1月28日 22時) (レス) id: 922d1d8c49 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：猫田 | 作成日時：2024年1月9日 9時
