4_Deviation of the steam ページ4
サオ・フェンの本拠地へ辿り着き、重厚な門が音を立てて開いた。同時にむせ返るような熱気が私たちの方へ溢れ出てくる。
サオ・フェンの部下に案内され、中へ入ると大柄な男二人が前へ立ちはだかっていた。私達を見る目つきは厳しい。どうやら武器を置いていかなければならないらしい。
ヘクターやエリザベスと同じように私も隠し持っていた重武器を机へ音を立てて置いていく。
一通り置いた所で前に進もうとすると、尚も男達は前に立ちはだかる。
『…まだ何か?』
「女だから、ドレスを着ているから、反逆を疑われないとでも思ったか?」
サオ・フェンは随分と用心深いようだ。部下でさえこんなにも厳しく
私とエリザベスは渋々ドレスを脱いだ。勿論ドレスの下には武器が隠してあった。
そして、エリザベスがズボンから武器を取り出したのを見て手下は薄ら笑いを浮かべて言った。
「外せ、全部だ。」
今すぐにでもこの不愉快極まりない男を海に沈めてやりたいと思ったが、なんとか持ちこたえて、私とエリザベスはズボンを脱いだ。
『こんな格好、トルトゥーガで仕事してた時以来ね。』
「仕事って…ずっとこんな格好を?…私には耐えられそうにないわ。」
そう言いながら、エリザベスはシャツの裾を伸ばし、落ち着かない様子で前に進んだ。
奥に進むと公衆浴場の様な場所が広がっていた。先程のむせ返るような熱気はこのためだった。多くの男達が湯船に浸かっている。此処にいるだけで暑いのに、湯船に浸かってなんていたら、どれほどの暑さなのだろう。
そんな風景を見ながら更に奥へ進むと大柄な男の姿が目に入った。ヘクターが慣れたように頭を下げる。なるほど彼がサオ・フェンか。そう思いながら、私も頭を垂れた。
「キャプテン・バルボッサ。シンガポールへようこそ。」
龍のような髭を持ち、刺青が深く入っている。権力が有り余っていそうな男だった。
「もっと蒸気を。」
より暑くなる室内に私は顔を顰めた。湯気は先ほどよりも濃くたちこめ、何もしていなくても汗が滴るような温度だ。落ちてくる汗を拭いながら、サオ・フェンの方へ目を向ける。
必ず、貴方を騙して、作戦を成功させてみせるから。
たちこめる湯気を睨みながら私は大きく息を吐いた。
Deviation of the steam
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猫田(プロフ) - oceaneさん» こちらこそ読んで下さり、ありがとうございます!お褒めの言葉も沢山いただけて嬉しい限りです。リアルとの兼ね合いもあり、更新停滞と更新を繰り返しておりますが、今後も久しぶりに見る位の熱量で覗いて頂けたらこちらも嬉しい限りです。 (7月8日 19時) (レス) id: 922d1d8c49 (このIDを非表示/違反報告)
oceane(プロフ) - 久しぶりに見たら更新されていて歓喜しました! 登場人物達の複雑な心情が見事に表現されている所や、映画の世界観が忠実に描かれている所など、猫田様の才能に脱帽します。1作目から楽しく読ませて頂いています。これからも陰ながら応援しております。 (7月5日 1時) (レス) id: 8c5911a62b (このIDを非表示/違反報告)
rinrinqq22(プロフ) - ほんとに面白いです…!続き待ってます! (5月8日 7時) (レス) @page19 id: 173fcaa33c (このIDを非表示/違反報告)
うしにく(プロフ) - バルボッサ愛おしすぎて泣ける無理 (2023年2月27日 1時) (レス) @page10 id: e97751424d (このIDを非表示/違反報告)
リリア(プロフ) - はじめまして、最近この映画のDVDを借りて家族と見てとてもこの映画が好きになりました。パイレーツ・オブ・カリビアンの2次小説で1番あなたの作品が好きです。自分のペースで頑張ってください。更新いつまでも待ってます。 (2020年8月17日 14時) (レス) id: a1c1a0f2f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:猫田 | 作成日時:2018年8月22日 13時