陶器人形とクイズと彼ら

疑惑。　izw side ページ33

目にまつげが入っただけだと彼女は言ってたけど、そんなわけない。
あんなに大粒の涙、俺だって随分長いこと流してない。

彼女は何か大きなものに囚われてる。
直感的にそう思う。ただそれが何なのかは分からない。
今の俺には何もしてあげることができない。

河「伊沢、そろそろ撮影始めないといけないけど」

伊「あぁ…うん。」

ふ「今日って基本全員だもんね…どうしようか？」

トイレに彼女が駆け込んでから数分が経ったが、未だに戻ってくる気配はない。
中で倒れてるってこともなさそうだけど、さすがに心配になってくる。

川「俺、様子見に行ってみます。」

伊「おう…じゃあ、俺らは撮影の準備始めるか。」

本音を言えば、この空気の中じゃ集中できない。
しかし、俺らにできることは目の前にある仕事をこなすことだけだ。
そう思うこしか今の俺にはできなかった。

川「あっ。」

『あ、すみません。ちょっと取りにくいところに入っちゃったみたいで…長くお借りしてしまい、すみません』

川上がノックをしようとした瞬間に扉が開いたらしい。
彼女の姿がひょこっと扉からはみ出ていた。

川「なんかあった？」
『いえ。ほんとに大丈夫です。眼も何とかなりましたので。』

いつも通りの彼女の返しに、これ以上深く聞くのも気が引けたのだろう。
川上は「そっか。」と返し、彼女を撮影場所のリビングまで案内してきた。

すでに集まっていたメンバーは口々に「大丈夫？」と声をかけるが、彼女は『大丈夫』の一点張りだった。

ふ「そう？じゃあ、Aちゃんもそろったことだし、早速今日の撮影を始めるね。」

簡単な説明を彼女にしたふくらさんは彼女を自分のそばに座らせた。
彼女も興味深そうに今日の企画の話を聞いている。

彼女の手の甲についた爪の跡に気付くのには、長く時間はかからなかった。

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