君と今日も明日も2 (ページ10)

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涙ページ10

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目を覚ましたあたしはさっきまで見ていたはずの夢を思い出せずにいた。

何か、すごく懐かしい気がするのに思い出せない。

夢は目覚めると殆ど忘れていて覚えていられない。

2歳からずっと眠っているあたしが"懐かしい"なんておかしな話だ。

けど、それ以外に当てはまる言葉が見つからなかった。

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余程疲れていたのか夕食も食べずに眠ってしまったあたしは、コンコンと言う扉をノックする音で目を覚ました。

急いで扉を開けると

「おはよう。
　今日は生徒に挨拶しに行く。
　支度しておけよ！」

とだけ言って部屋へ戻った相澤さん。

生徒に挨拶…？

どうして？

そこでふと思いついた。

『万が一の事を考えて、抹消を使える彼と行動を共に
　する事が条件だが…。』

塚内警部の言っていた言葉。

あの言葉はそういう意味だったのか…と今になって気がついた。

生徒には接触しないものだと思っていた…。

今はまだ眠っている彼女がいつ牙を剥くかわからないのに、生徒に接触するのはあまりにも危険だ。

それに、あたしは教師寮で生活するのに生徒に挨拶をしなくてはいけない理由が見当たらない。

色々聞きたいことはあるが、相澤さんは用件だけ伝えて去ってしまった。

昨日オールマイトが合理主義で無駄な事を嫌うと言っていたが、これは言葉足らずとは違うのか…と朝から盛大な溜息を吐いた。

仕方なく相澤さんに言われた通り身支度を整えたあたしは食堂へと移動した。

昨日食べ損ねてしまった夕食が冷蔵庫に閉まってあったので、それを温め直して食べた。

ここは教師寮なのに、あたしはまだ相澤さんとオールマイトと根津校長にしか会ったことがなかった。

他の教師は、あたしが同じ寮にいることをどう思っているんだろう？

"もう一人のあたし"は雄英の教師と戦ったことがあるんだろうか？
誰かを傷つけたことがあるんだろうか？

やっぱりあたしにはわからないことばかりで、それがとても悔しくて鼻の奥がツンと痛くなった。
けど、涙は出ない。

涙なんてとうの昔に枯れてしまった。

だからどんなに苦しくても辛くても涙は出ない。

その筈なのに…あの過呼吸を起こしたあの日。
あの時だけは涙が溢れて止まらなかった。

そんな事は初めてだった。

なのに、あれはどうしてだったのかさえ思い出せなかった…。