君と今日も明日も2 (ページ9)

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偽者ページ9

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あれから校長室を後にしたあたしは黒いチョーカーを首に装着し、相澤さんとオールマイトと共に動作確認をした。

個性が使えないので、GPSの方で確認してみる。

雄英高校の門から1歩足を踏み出した瞬間、相澤さんとオールマイトの携帯から通知音が鳴った。

どうやら正常に作動しているようだ。

あたしの部屋は教師寮で、相澤さんの隣の部屋だ。

家具も家電も服も、何も持っていないあたしの為に必要最低限のものは根津校長が用意してくれた。

寮内の案内や寮でのルールを一通り説明してくれた相澤さんは

「今日はゆっくり休め。」

と言って隣の部屋へ入っていった。

慣れない環境と気疲れから急に睡魔が襲ってきたあたしは、いつの間にか眠ってしまった。

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『君の名前は、今日から死柄木Aだ。
　そしてこの子が死柄木弔。
　君の双子のお兄さんだよ。』

そう言って、先生はあたしに弔を紹介した。

『A…、弔…。
　あなたが…あたしの家族？』

とあたしが聞くと

『ああ。
　これからはずっと一緒だ。
　おかえり、A！』

と弔はあたしを抱きしめた。

あたしには殆ど記憶が無いはずなのに、弔が双子の兄だと言われて何故かしっくりきたのを覚えてる。

まだこの頃は燈の人格だった。

けど、日に日に大きくなる得体の知れない誰かがあたしを飲み込もうとしているような…。

そんな恐怖を感じていた。

そしてついにあたしはAに飲み込まれ、主導権を奪われて彼女の内で眠る存在となった。

口調も仕草も、あたしとは正反対のA。
性別すら偽って生きる彼女を、あたしはいつもぼんやりと眺めていた。

彼女を形成する源はいつも死柄木弔だった。

死柄木弔は、死柄木Aにとって唯一無二で大切な存在だ。

けど、双子の妹だと思っているAの肉体も人格も全て偽者だ…。

あたしの肉体は未だ眠り続け、あたしの人格はAに奪われているんだ。

最初は嫉妬した。
あたしのお兄さんを返して欲しかった。

けどいつからか、彼女が救いを求めていると思うようになった。

あたしと、何もかも全てが正反対だと思っていた彼女が犯罪行為に手を染めるのを本心では拒んでいた。

それはあたしだけが知っている事実で、死柄木弔ですら知らない事だ。

それを知っているのはあたしだけ。
あたしだけなんだ。