君と今日も明日も2 (ページ6)

今日:1 hit、昨日:32 hit、合計:17,216 hit

空っぽなあたしページ6

38

「無理にとは言わない。
　君の不安な気持ちも理解している。
　けれど…我々も最善の策がこれしか思い浮かばなか
　った。
　すまないね。」

と頭を下げた塚内警部。

違う。

塚内警部は悪くない。
警察の皆さんもヒーローも誰も悪くないんだ。

悪いのは…全部あたしだ。

「…わかりました。
　あたしを、雄英高校で監視して下さい。」

とあたしは深々と頭を下げた。

不安が消えた訳じゃない。

でもそれ以上に、塚内警部やオールマイト、相澤さん達に迷惑をかけたくなかった。

「君にばかり負担をかけてすまない。
　けれど、ありがとう。」

と塚内警部も頭を下げた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌日、私の元へ荷物が届いた。

明日からお世話になる雄英高校の制服だ。

制服なんて…着るのは初めてだ。
学校にだって通ったことがないんだ。

あたしの時は、2歳のあの日からずっと止まったままだった。

制服をハンガーにかけて備え付けの小さいクローゼットの中へとしまって一つ溜息をつく。

あたしが死んだら、この身体はどうなるのかな？
彼女のものになるのかな？
それとも魂は元の身体に戻るのかな…？

自分の個性すらわからない。

家族も仲間も双子のお兄さんも…。
彼女にはたくさんいるのに、自分には何もなかった。

身体も心も空っぽなあたしは、これからどうやって生きていけばいいのかわからなかった。

あたしは"もう一人のあたし"を救けたかった。
けど、あたしの事は誰が救けてくれるの…？

ヒーローが？
警察が？
誰かが…？

その時

『今度は俺が…絶対に救けてやる。』

と誰かの声が聞こえた気がした。

知らないはずなのに、胸が苦しくて涙が溢れて止まらなくなった。

息が上手く吸えない。
息苦しい…！
生き苦しいよ…！

ねぇ、あなたは誰なの…？

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

次に目を覚ましたのは病室のベッドの上だった。

あれ？
あたし…なんで？

すると病室の扉が空いた。

彼女は担当の看護士さんだ。

「あ、志村さん！
　目が覚めたんですね！
　過呼吸で倒れたんですよ。
　覚えてますか？」

とあたしに声をかける看護士さん。

あぁ、そうか…。
あの息苦しさはそのせいだったのか…。

「ご心配おかけしてごめんなさい。」

とあたしが眉を下げて謝ると

「いえいえ！」

と看護士さんは笑って返事をしてくれた。