君と今日も明日も2 (ページ4)

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大切な人ページ4

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「それではお大事に、失礼したね。」

と塚内警部とオールマイトが会釈をして病室から出て行ってから、あたしはさっきの塚内警部の笑顔を思い出していた。

なんでだろう。
なんだかすごく懐かしい感じがする…。

あたしが不安な時、笑ってくれた誰かのことを思い出せそうで思い出せなかった。

本当に…あたしは何も知らないんだ…。

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"治癒の個性"とは凄い個性で、あたしの骨折はあっという間に完治した。

リハビリも順調に進み、自由に歩けるようになった。

そして、検査の結果などで後からわかったことだが、入院当時のあたしは極度の緊張状態だったそうだ。

重度の精神疲労とストレス、加えて身体的外傷。

それがあたしと彼女の主導権が入れ替わったトリガーではないかとお医者さんは言っていた。

確かにあの子と入れ替わった時、とても頭が痛かったのを覚えている。
それが精神疲労とストレスのせいとは断言できない。

けど、開闢行動隊の指揮という大役の重圧と、彼女が完璧主義者だからだと考えると納得できた。

彼女は粗暴で好戦的だが、基本的に真面目すぎる。

彼女はあれからずっとあたしの中で眠り続けている。
でも、いつまた目覚めて主導権を握られてしまうかわからない。

あたしがいくらやめて欲しくても、この間のように緩まなければ干渉することもできない。

あの子には、もう罪を重ねて欲しくないんだ。
だってそれが彼女の本望じゃないことをあたしだけが知っているから…。

"もう一人のあたし"はいつも"誰か"の為に戦ってる。

あたしが目を瞑ると瞼の裏にぼんやりと誰かの笑顔が浮かぶ。
それは多分、彼女にとって大切な人なんだと思う。

あたしがわかるのは、死柄木Aという彼女のことだけ…。

あたし自身の家族のことも、彼女の仲間のことも、塚内警部の言っていた死柄木弔という双子のお兄さんのことも、なにも知らない…。

知らないのに、あたしの中の彼女の部分が言ってる。
『弔に会いたい』って…。
彼女にとって死柄木弔という人はそれだけ大事な人。

死柄木弔は敵連合のボスだ。
彼と一緒にいる為に、あの子はこれからも自分を殺して犯罪に加担するだろう。

あたしは彼女に幸せになって欲しいだけなのに…。
彼女の幸せはいつも手の届かない場所にあって。
とても残酷だ…。

どうして…上手くいかないんだろう。

"もう一人のあたし"は未だに眠ったままだった。