君に触れる ページ26
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弔side
布団の中へ入ってきた外気が冷たくて目を覚ました。
けど背中がとても暖かい。
あぁ、Aか…。
背中合わせでこうやって眠るのは何年ぶりだろう。
小さい頃は毎日こうして一緒に眠っていた。
それがとても懐かしい…。
そっと起き上がって、Aの寝顔を眺めた。
目元を赤く腫らした子供のようなAが、酷く愛おしくて月明かりに照らされた髪をそっと撫でた。
こういう時、自分の個性がもどかしくなる時がある。
手を握ってやる事も、抱きしめてやる事も…俺は何もしてやれない…。
俺は壊すことしかできない。
「…弔？」
と目を覚ましたA。
「どうした？
大人になってから、Aが俺の布団に潜り込んで
きたことなんて一度もなかっただろ？」
と俺が聞くと
「今日だけ…。
今日だけだから…隣で一緒に眠らせて…。」
と小さく呟いて少し頬を赤く染めたA。
Aのこういう所が可愛い。
眠い時は話し方が素に戻るところとか…。
多分俺しか知らないAの意外な一面だ。
「A…俺の個性、拒絶しろ。」
と俺が言うと
「…いいけど、急にどうした？」
と首を傾げたA。
「Aに触れたい。」
と俺が答えるとわかりやすく照れるA。
暗闇でもわかる赤い頬がまるで少女のようで可愛らしい。
なんて言ったら、きっと「子ども扱いすんな」って怒るだろう。
「わかったよ…。」
とAは俺の右腕に触れて
「死柄木Aは、死柄木弔の個性を拒絶する。」
と言った。
「もう大丈夫だぞ！
弔が触ってもオレは崩壊しない。」
と俺と手を合わせるA。
この"拒絶"という個性は、本当に発動しているのか拒絶されている側にはわからない。
拒絶している側、つまりAにはわかるらしい。
平気だとわかっていても、触れる時はいつも怖い…。
震える手で恐る恐るAの頬に触れた。
「な？
大丈夫だろ？」
と無邪気に笑うAの小さな身体を俺は両手で抱きしめた。
「A…おかえり…。」
と俺が言うと
「うん、ただいま…。」
と言ってAは俺の背中に手を回した。
歪んでいるかもしれない。
けど、俺はAを誰にも渡したくない…。
家族愛とは違った愛情。
けど、これは俺だけの秘密だ。
その想いをそっと心の奥にしまって、Aの温もりをその両手いっぱいに感じた。
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作者名：九音 | 作成日時：2021年3月3日 23時
