幼い寝顔 ページ25
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燈が眠ったことで、やっと目覚めることができた。
弔との接触がトリガーになったようだ…。
「いや、今はAで合ってる。
もう迎えに来てくんねぇのかと思った…。」
とオレが拗ねたように答えると
「ごめん。
あれから俺たちも色々あって、こっちが落ち着くま
で迎えに来れなかった…。」
と謝る弔。
「色々あった…よな。
先生は捕まってタルタロスか？
みんなはどうしてる？
全員無事か？
でも一番は…弔が無事で良かった…。」
そう言うと涙がポロポロと零れ落ちた。
「弔が迎えに来てくんないのは、オレが弔にとって必
要ないからじゃないかって…。
そう思ったら…怖くて…。」
と涙を拭うこともせずに続けた。
涙と共に不安も溢れて止まらなかった。
「そんな訳ないだろ？
けど、ここに長居すんのは良くないな。
取り敢えずここを出て話をしよう。」
と言う弔に、オレは頷いた。
「…と、その前に…。」
と弔はオレの首のチョーカーに触れた。
五指で触れたチョーカーは一瞬で崩れ落ちる。
「行こうか。」
と弔は優しく笑うと、オレの手を引いて黒霧のワープゲートを潜った。
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あの後弔たちは、先生のお陰でなんとか逃げることができたそうだ。
今は捜査の目を眩ます為、連合メンバーは各地に分散している。
取り敢えず全員無事な事に安心した。
弔は、あの日神野で何があったのかオレに聞かなかった。
『今はAによく似た誰か…か。』
と弔は確かにそう言った。
オレがついさっきまで志村燈だったことを知っているような言い方だった。
オレはそれについて聞かれると思ってた。
けど弔は何も聞かずに眠ってしまった。
でも、ちゃんと言わなきゃいけない。
この身体もこの人格も、志村燈のものではないということを…。
拒絶されることが怖い。
だけど、弔に嘘をついたままなのが嫌だった。
だから明日は、オレからこの事をちゃんと話そう。
オレは枕代わりに使っていたクッションを抱えて弔の元へと向かった。
弔は規則正しい寝息をたてて眠っていた。
寝顔を見るのは久しぶりだった。
その少し幼い寝顔はとても敵には見えない。
オレは持ってきたクッションを弔の枕の隣に並べて弔の布団に潜り込んだ。
今日だけ…。
今日だけでいいから…一緒にいたい。
オレは弔の温もりを感じながら眠りについた。
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作者名：九音 | 作成日時：2021年3月3日 23時
