裏切り者 ページ24
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どうして敵の彼女が仮免試験に参加しているのか…。
生徒に危害を加えるつもりだったのか…。
色々気になる事はある。
けど、あたしが今聞きたいのはそれじゃなかった。
「死柄木弔に…あたしは必要ない…？」
と小さく呟くと
「弔くんを裏切ったのはAくんなのに、変なこと
聞くんですね？」
と彼女は興味無さそうに答えて、窓から出て行ってしまった。
あたしは何を聞いてるんだろう…。
これじゃ、まるで死柄木弔に迎えに来てほしがってるみたいだ。
けど、最近のあたしはどうかしている。
"もう一人のあたし"を救けたいはずなのに、心のどこかで死柄木弔に必要とされたがってる…。
きっとあたしは疲れてるんだ…。
そう思うことで平静を保とうとした。
そして、さっきまで止まらなかった震えも吐気もいつの間にか止まっていた。
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あれから仮免を取得した生徒たちと共にバスで雄英へと戻ってきた。
轟くんと爆豪くんは残念ながら試験に落ちてしまったそうだ。
相澤さんはあたしの体調を気遣ってくれて、今日は早めに休むようにと部屋まで付き添ってくれた。
寮へ戻ってからも、昼間の彼女の事が頭から離れなかった。
彼女は"弔くんを裏切って"と言っていた…。
それは彼自身があたしを裏切り者だと思っているという事…？
だからあたしを取り返しに来ないのかと思うと納得できて、チクリと胸が痛んだ。
少なくとも、Aは死柄木弔を裏切ろうとは思ってない。
あたしが彼女に干渉できなかったように、彼女も今あたしに干渉できないだけだ…。
いつの間にか暗くなった夜空を眺めて
「死柄木弔…あなたは彼女を救けに来ないの？
あなたにとって死柄木Aは大事な人じゃない
の？」
とポツリと溢した。
返事なんて当然返ってくる訳なくて、あたしの言葉は夜空に溶けて消えた。
そのはずだったのに
「遅くなってごめん、A…。
いや、今はAによく似た誰か…か。」
と黒いモヤの中から突然現れた人物。
その真っ赤な双眼に目を奪われる。
枯れてしまったはずの涙が溢れて止まらない。
あたしは知ってる。
この人が…"死柄木弔"だ…。
迎えに来てくれた。
心のどこかでずっと待っていたのかもしれない。
そしてその瞬間、まるでスイッチが切り替わったかのようにあたしは彼女の中で眠りについた。
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作者名：九音 | 作成日時：2021年3月3日 23時
