痛み ページ13
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「志村の件については以上だ。」
と相澤さんは生徒に有無を言わせずに話を続けた。
「当面は合宿で取る予定だった"仮免"取得に向けて動
いていく。」
と言う相澤さん。
「大事な話だ、いいか。
轟、切島、緑谷、八百万、飯田…
この5人は、あの晩あの場所へ爆豪救出に赴いた。
その様子だと、行く素振りは皆も把握していたワケ
だ。
色々棚上げした上で言わせて貰うよ。
オールマイトの引退がなけりゃ俺は、爆豪、耳郎、
葉隠以外全員除籍処分にしてる。
彼の引退によって暫くは混乱が続く…。
敵連合の出方が読めない以上、今雄英から人を追い
出す訳にはいかないんだ。
行った5人はもちろん、把握しながら止められなか
った12人も、理由はどうあれ俺たちの信頼を裏切っ
た事には変わりない。
正規の手続きを踏み正規の活躍をして、信頼を取り
戻してくれるとありがたい。
以上！
さっ、中に入るぞ。
元気に行こう。」
と言った相澤さん。
敵連合に攫われた爆豪くんを救出に行った子たちは、みんな優しくて勇気ある行動をしたと思う。
オールマイトの引退後で除籍処分を免れたとは言え、この子たちがあの場所へと赴かなくてはならないそもそもの原因を引き起こした側の人間としては心が痛かった。
あれから敵連合は動きを見せていない。
先生と呼ばれていた人物を失ったからか…。
死柄木Aを失ったからか…。
どちらにせよ、大事なら取り返しに来るはずだ。
でも、あたしの前に敵連合が現れないという事は死柄木弔にとって死柄木Aはその程度の人物だったという事…。
そう思うと"もう一人のあたし"が可哀想に思えて仕方がなかった。
彼女はあんなに死柄木弔を大切に思っていたのに、どうして…。
家族って…兄妹って…その程度の繋がりなの？
相澤さんが生徒たちに寮の説明をしている間、あたしは寮の外のベンチに座って待機していた。
「とりあえず今日は部屋作ってろ。
明日また今後の動きを説明する。
以上、解散！」
と言って寮から出てきた相澤さんは、浮かない顔をしたあたしに
「大丈夫か？」
と声をかけてくれた。
「わかっていても辛いものですね。
人から拒絶される痛みを、あたしは受け止めるつも
りでいました。
けど実際に拒絶されると、とても痛かった…。
やっぱりあたしは敵でしかないんだなって…。」
とあたしは消え入りそうな声で答えた。
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作者名：九音 | 作成日時：2021年3月3日 23時
