困惑 ページ12
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今日から生徒たちの寮生活がスタートする。
「とりあえず1年A組、無事にまた集まれて何より
だ。」
と言う相澤さんの言葉で始まった寮についての説明。
生徒たちがパニックを起こさないように…とあたしは少し離れた所で待機していた。
「さて…！
これから寮について軽く説明するが、その前に全員
に紹介しておくべき人物がいる…。」
と前置きをしてからあたしを手招きした相澤さん。
不安と恐怖から少し体が震えるのがわかる。
あたしは生徒からのどんな反応も言葉も受け止めなくてはならない。
例え今のあたしが死柄木Aでなかったとしても。
あたしが相澤さんの隣に立って顔を上げると、生徒の反応は様々だった。
普段から黒いフードを被っていたあたしの顔にピンと来ていない生徒もいるだろう。
話し方や仕草から、皆男性だと思っていただろう。
けど、この赤い瞳だけは皆見覚えがあるようで困惑した表情が見てとれた。
「死柄木A…。」
と誰かが呟いて、あたしの肩がビクッとはねる。
「なんでここに敵がいるんだよ！？」
とパニックになる生徒たち。
無理も無い。
あたしが逆の立場だったら同じ反応をしただろう。
「説明するから静かにしろ。」
と言う相澤さんの言葉で静けさを取り戻す生徒たち。
「まず、彼女は死柄木Aじゃない。
全く同じ容姿をした違う人物だ。
個性も使えず、死柄木Aのような危険性もな
い。
彼女の名前は、志村燈…。
警察側とヒーロー側で協議した結果、彼女を暫く雄
英で保護及び監視することになった。
不安になる気持ちはおまえたちも彼女自身も同じ
だ。
寮は教師寮で生活。
授業中はA組の教室で常に教師がいる環境の中過ご
してもらう。
彼女の首のチョーカーは、個性を感知すると教師全
員に知らせる仕組みになっている。
GPSもついていて、彼女の移動は雄英の敷地内の
みだ。
このチョーカーに関しては、彼女自身が承諾して装
着している。
それが彼女の決意とケジメだ。
それを踏まえた上で、彼女自身を見て欲しい。
彼女は死柄木Aではなく、志村燈だ。」
と説明した相澤さん。
相澤さんはあたしを"あたし"として見てくれている。
けど、生徒たちの目にあたしはどう映るだろう…。
やっぱり敵の死柄木Aにしか見えないだろうか…。
あたしは生徒たちに拒絶されるのが怖くて、俯いた顔を上げることができなかった。
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作者名：九音 | 作成日時：2021年3月3日 23時
