ここにいる意味 ページ11
43
支度を済ませて部屋で待機していると、扉をノックする音が響いた。
相澤さんだろう。
あたしがドアを開けると
「支度は済んでるな。
じゃぁ、行くぞ！」
と言った相澤さん。
「ちょっと待って下さい！」
とあたしが大きな声で呼び止めると、相澤さんは少し驚いた顔を見せた。
「どうして、わざわざ生徒に挨拶をする必要があるの
か教えて下さい。
あたしは、元敵ですよ？
あたしに恐怖心やトラウマを抱えている生徒がいる
可能性もあるのに…。
あたしが教師寮で過ごすのなら、生徒は一切関係な
いじゃないですか！
まさか一緒に授業を受ける訳じゃあるまいし…。」
とあたしが先程から疑問に思っていたことを言うと
「志村…。
すまないが、そのまさかだ。
俺と行動を共にするという事はそういう意味だ！
普段は教師寮で過ごしてもらうが、授業のある日は
1年A組の教室で過ごしてもらう。
授業を受けろとは言わないが、教師の目が届かない
場所におまえを一人で放置しておく訳にはいかない
んだ。
わかるか？」
と答えた相澤さん。
そうか…。
授業のある日は教師たち全員が学校にいる。
あたし一人を寮に残して行く訳にはいかないんだ。
でも、それでも同じ教室に元敵がいる…。
それは本当に安全と言えるの？
"もう一人のあたし"が目覚めない保証なんてどこにもないのに…。
あたしが不安で表情を曇らせると
「いいか、志村。
おまえは志村燈であって死柄木Aじゃない！
けど、おまえの内に潜む死柄木Aが生徒に危害
を与えないように…生徒の安全を守れるように…。
俺たち教師の目が届く場所で過ごしてほしい。
おまえが優しいからこそ生徒を心配する気持ちもわ
かる。
不安に思う気持ちもわかる。
だから、明日から共に過ごすA組の生徒たちに事情
だけは説明するつもりだ。」
といつもより優しい声色で説明してくれた相澤さん。
あたしはそれ以上言える言葉が見つからなくて、俯きながらも頷くことしかできなかった。
あたしがここにいる理由も…
このチョーカーの意味も…
もう一度よく考えてみたら、それが一番安全で最善の策なんだと思わざるを得なかった。
相澤さんも根津校長も、あたしのことをしっかり考えてくれている。
不安だからといって文句をを言う権利はあたしにはないんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 16人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：九音 | 作成日時：2021年3月3日 23時
