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肌の色は白色だが、血の通ったあたたかな白ではなく、まるで血が冷えて凍りついたかのような、うっすらと青みがかった雪のような白である。その白色のなかで、唇だけがまるで陶磁器の上に柘榴の汁がひとしずく垂らされたかのように仄かな紅みを帯びている様は異様であり、彼の姿をみた者が本能的な恐怖を抱かせるほどに凄絶な、威圧的とも言える程の色気を放っている。その白い肌と青緑の瞳を縁取る長い睫毛の影も相まって未亡人のような、やや仄昏い退廃的な雰囲気が漂っており、それは性的指向にも嗜好にも関係無く、すれ違いざまに彼の姿を無意識に目で追ってしまうほど。しかし、普段から常に柔和な表情になるよう務めているためか、その色気はかなり薄まっている。表情や声、態度によって優しげに見えているだけであって、顔の造形そのものはどちらかと言うと「悪人顔」と呼ばれる部類に入り、キツめな顔立ちをしている。
かなり筋肉質で男らしい体つきをしているが、コートを着ていない普段の彼の体型を観察すると、思ったより腰が細く、胸や臀部がふっくらとしており、通常より大きめであることが分かる。特に下半身は肉付きが良く、臀部から太もも、そして脹ら脛へ至るまでのボディラインの隆起は肉感的で、非常に魅力的である。ちなみに臀部が大きい…良く言えば肉付きが良いことを本人はひっそりと、だがそれなりに気にしているようで、コンプレックスとまでは行かないが体型に関してはあまり触れて欲しくはない話題のようだ。
容姿や雰囲気はジョン・ウィリアム・ウォーターハウスが1894年に、アーサー・ヒューズが1863年に、そしてジョン・エヴァレット・ミレーが1852年に製作した『オフィーリア』や、エドワード・ロバート・ヒューズが描いた『ヴァルキリーの不寝番』を思わせる。物憂げな表情を浮かべ、静謐かつ濃密な「死の空気」を漂わせた男、といういかにも美術作品に登場しそうな存在であるが、その「死の空気」というのは不健康そう、幸薄そう、ということではなく、「死という概念の持つミステリアスな魅力や神秘性」を感じさせるという意味であり、例えるならば、雨上がりの曇天の空の下で水滴が幾つも幾つも付着している蜘蛛の巣を見つけた時のような、そんな気持ちに似ているかもしれない。
イメージソングにサン=サーンス作曲の『水族館』や、ダウランドの『涙のパヴァーヌ』、ラフマニノフの『ヴォカリーズ』、タレガの『ラグリマ』などが非常に似合いそうな男性。
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作者名:ねこうさぎ | 作成日時:2021年1月12日 18時