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それから少しして、お父さんが死んだ、らしい。白雪お姉ちゃんが教えてくれた。感情は難しいけど、白雪お姉ちゃんと一緒に勉強していたから、少し悲しいと思った。お父さんはわたしは特別なんかじゃなかったけど、白雪お姉ちゃんがわたしに構ってくれるから、出来たことを報告したら頭を撫でてくれた。わたしをほめてくれたことはない。けど、頑張ったことを認めてくれはしたから。白雪お姉ちゃんとお揃いの服を着せてくれて似合ってるって言ってくれたから。お父さんはこわい人。何となく、わかっていた。それでもわたしたちの“お父さん”だから。白雪お姉ちゃんは、お父さんが死ぬことを知っていた。お父さんはもう帰ってこないって言っていたから。白雪お姉ちゃんは、「後継者」で、「最高傑作」なんだって。白雪お姉ちゃんが言っていた。お父さんの理想が私なのだと、白雪お姉ちゃんは自分のことを少しだけ、教えてくれた。そして、「お父さん」を越えたから、お父さんは死んだのだと白雪お姉ちゃんは言った。
「お父さんは、満足して逝ったんだよ」
そう、星空を眺めて答えた白雪お姉ちゃんは儚く麗しかった。
そして数日後に白雪お姉ちゃんがわたしに問うた。
「合歓はお母さんと蕀のことは好き？」
それにわたしは考えて、考えてフルフルと首を横に振った。
「お母さんは確定なんだけど、蕀はどうしようか迷ってて。合歓はどう思う？」
まるでトランプタワーを壊すかのような気軽さで白雪お姉ちゃんは淡々と語る。幼いわたしでも、どういうことか、わかった。白雪お姉ちゃんはお母さん達を“殺す”のだ。そして蕀お姉ちゃんの生死はわたしの手に委ねられた。白雪お姉ちゃんは半身である蕀お姉ちゃんのことは好きじゃない、嫌いだけどおんなじ子どもだから自分だと殺す一択だから、わたしに選んで欲しいと言っているのだろう。白雪お姉ちゃんは、壊れているけど優しいから。だから、
「わたし、蕀お姉ちゃんは好きじゃないけどまだ死なないで欲しいな」
そう言うと長い睫毛に縁取られたラベンダーの瞳が細められてわたしを見て、頭を撫でられ抱き締められた。優しい優しい白雪お姉ちゃん。わたしを愛してくれるたった一人のお姉ちゃん。初めての家族。白雪お姉ちゃんが好きに生きれるように、わたしは生きたいとそうその腕の中で思った。
「ありがとう、合歓」
掠れた小さな呟きは白雪お姉ちゃんの年相応の脆さと強さだった。
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作者名：Coneko | 作成日時：2023年1月30日 2時
