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(Aside)
「……何でも、ないと言われても…」
あきらかに何でも、あるでしょう…。
言われたとおりに横になったまま、綺麗に木目のそろった天井を見て呟きました。
だって、そのあとにあの招き猫さんの声とあきらかに頭蓋骨に響くであろう拳骨の音がしましたので。
招き猫さんと仲良くなったのでしょうか?
いや、この場合は後をつけられたのが正解でしょうが。
思考をめぐらせながら、電球の白い光が寝起きの目には少々きついので、半目になって視線を泳がせます。
襖、障子、簡素な文机、水の入った洗面器、古そうな和箪笥。
どこでしょうか?
たぶん、あのひょろ男君の声がしたので、おそらくあの人の家でしょう。
自問自答して、一度額に乗せられた濡れタオルで視界を遮りました。
「ふふ………家に連れてってくれるなんて、予想外です。放っておくと思ってました」
今までは皆、そうでしたから。
不覚にも、口元が緩んできちゃいました。
ぷかぷかと浮かび上がる感情は、確かに久しぶりのもので
思ったより心が躍るものなのです。
さっきまでの夢が、ほんの少しだけ気にならない程度にですけれど。
たしかに、心がステップを踏んだのを感じたのです。
「…あのーー」
濡れタオルの上から腕を目に当てて、少し大きめの声で呼びかけます。
夏「あ、はい!」
から、と木枠が木の敷居で滑る音がすぐ向こうから聞こえました。
がたがたと、なにか決まりの悪い音がそのあとに間隔を短くして聞こえます。
慌ててます。
常識人くんが、常識的に考えて、わたしを一人にしているということに気が咎めたのか、真面目にこちらに来てくれているようです。
夏「大丈夫ですか?」
すぐに右のほうから、から、という音がして、常識人くんが現れたことがわかりました。
それに目元のタオルをどかして、心配そうで焦っている目と、目を合わせます。
「大丈夫です。おかげさまで」
夏「そうですか……。よかった。…急に倒れたんで、どうかしたのかと」
ほっ、と息を吐いた常識人くんに冗談めかした笑みで言う。
「急にじゃなくて、いちおう倒れると言いましたよ?」
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ルア・クロワール(プロフ) - さんきゅう、ゼル!次も頑張るのにゃ! (2015年1月27日 21時) (レス) id: 266707fba7 (このIDを非表示/違反報告)
ゼル@瑞西領平成目隠島物怪村(プロフ) - ルアー!ハロハロ~☆やっと来れたよ!夢主ちゃん激おこぷんぷん丸カムチャッカファ…げふんげふん。とりあえずお気に入りぽちっとな! (2015年1月24日 22時) (レス) id: d2761511ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルア・クロワール | 作成日時:2015年1月23日 21時