カランカラン... ページ1
大阪に複数ある歓楽街の１つ、京橋のスナックで私は働いている。
まぁ気さくなお客さんばっかりで、働きやすいええ店なんです。
隣の駅にテレビ局があるせいか、たまに良く分からん業界人的な人が現れたりする。
楽しく飲んでくれたらそれが1番！それをモットーに私は働いていた。
カランカラン...
店のドアが開く音がした。
この店はカウンターだけしか無くて、席数は詰めて詰めて10人座れる位。
そこに２人連れのお客さんが入ってきた。
「あれ？ママは？」
胡散臭い業界人の田中さんが私に声をかけてきた。
「あぁ、ごめんな。ママ、野暮用で出てるわ。すぐ戻ると思うで？」
私はカウンターの上にお絞りを２本とコースター２個を出す。
「何や、ママおらんのか。」
残念そうな声を出しながらカウンターにつくと、一緒に来たお連れさんに座る様に声をかけた。
「座りや、せっかくおもろいママに会わせたろうと思ったのにおらんねんて。」
「ふーん、まぁ仕方ないんちゃう？」
お連れさんも席に腰を下ろした。
それぞれの前にコースターを置き、お絞りを拡げて渡していく。
「何飲みます？田中さん、もうボトル無いで？」
「え、そやったかな？ほな前のと同じやつキープしといて！」
「ロックやんな？お連れさんは何が良いですか？」
「あー、俺はビールでええわ。」
目深に被っていた帽子を脱ぎ、カウンターの上に置いた。
(...どっかで見た兄ちゃんやな。)
そう思いながらロック用の氷をアイスペールに入れ、開けたばかりのボトルを田中さんの前に置いた。
「あ、Aちゃん、グラスくれたら俺自分で作るで。」
手を伸ばしてグラスをくれと言う。
「ごめんな、お願いします。」
私はグラスを渡すと瓶ビールの栓を抜き、コースターのうえにグラスを置くとビールを注いだ。
「お、ありがとう。」
どっかで見た兄ちゃんがお礼を言うてきた。
「いえいえ。」
私はニッコリ笑うとおつまみを小皿に入れて、それぞれの前に置く。
「Aちゃんも何か飲みや！」
「え、良いの、田中さん！ほな私もビールもらお。」
ビールの栓を抜いて、自分でグラスに注ごうとしたら、どっかで見た兄ちゃんが私の手からビールを取り上げ、グラスに注ぎ始める。
「あ、すみません。」私がそう言うと「手酌はあかんで。」って笑われた。
「ほな、乾杯やな！」
田中さんが私のグラスにグラスを合わせる。
３人でグラスを合わせ、「いただきます〜。」って挨拶をして私はビールを飲んだ。
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作者名：KYRKR | 作成日時：2017年5月20日 1時
