変わる ページ5
「えー、何で？飯食いに行くだけやん。行こうや〜。」
今度は拗ねたような言い方をしてきた。
少し上目遣いで私を見る村〇さん...。
(...くっそ、可愛いな。でもアフターは嫌や。)
「ごめん、ほんまに行かれへんねん。村〇さん位の人やったら可愛い子いくらでも来るんちゃう？私なんか誘わんでも〜。」
笑顔でヨイショもまじえて断る。
「いや、Aちゃんがええねん。いくら遅なっても待ってるから。」
(...しつこいなぁ。捨てられた子犬みたいな目しやがって。)
「...ほんまにあかんねん。ごめんなさい。」
私は頭を下げてまた断った。
「さっきさ、何でこの仕事してんのって...聞いたけど...何でなん？」
グラスを傾けながら、またしょうもない質問を投げ掛けてくる。
「あ...の...聞いても面白くないですって！」
自分のグラスにビールを注ぐと、一気に飲み干した。
「金...いるの？借金...とか？」
口角を上げ、人を小馬鹿にしている様な表情に見える。
「や...そんなんでも...」
「いくらいるん？俺...出したるで？そやから付き合うてや、今晩...。」
そう言いながら私の手を握ってきた。
バッと手を離し、私はカウンターからさりげなく距離を開ける。
「逃げんでもええやん。俺の女になったら悪い様にはせんで。とりあえず今晩...俺と付き合え。」
村〇さんは、何処からか取り出したタバコに火をつけると、「灰皿。」と言った。
「あ、は...い。」
灰皿を村〇さんの前にそっと置く。
その瞬間、腕を掴まれて引っ張られた。
「なぁ、気持ちええ事...しよ...や？」
私の耳に息を吹きかけながら囁く。
(...あかん、もう限界や...。)
私はデンモクを取ると、演奏停止のボタンを押し、カラオケを消した。
「ちょっと、Aちゃん...何で消すねん！」
田中さんがマイクを通して問い掛けてくる。
その声を無視して私はママに向かって叫んだ。
「ごめん、ママ！今、この瞬間に店辞めさせてもらうわ！！」
「はぁ？」
怪訝な顔したママにペコッと頭を下げると、村〇さんの方に向き直した。
目を大きくしている村〇さんを睨み付けると私は深く息を吸い、感情を剥き出しにする。
「お前なぁ、さっきから黙って聞いてたら...調子乗ってんちゃうぞ！」
「はぁ、お前何言うとん...ねん。」
タバコを灰皿の中で揉み消すと、ゆっくりと立ち上がった。
「何回も丁寧に断っとるやろが！ニッコリと笑って誘ったら誰でも付いてくると思うな、アホ！」
もう止めれらない...。
続く
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作者名：KYRKR | 作成日時：2017年5月20日 1時
