今日も風さえ吹きすぎる3【中原中也】

風が頬をなでた23 ページ24

「手前の母親を殺したのは俺だ」

『え、』


これはどうすればいい



「首領の命令でな

Aがこの世界に戻って来た時に見ただろ、殺し終わった所」



『ちょっと待って、じゃああの時私が見た死体は』


「手前の母親だ」



『何それ、笑える』

乾いた笑い声がリビングに響く


『私ね記憶が戻ってからお母さんの事、憎んでたの、私に勝手に罪をきさせてあんな目に合わせて、この世界に戻って来て太宰さんに殺されたって聞いた時は興奮した、ざまあみろって思ったんだ

ねえ中也』


「何だ」



『お母さんが居なくなって嬉しいはずなのに心に穴が空いた感じがするの、私っておかしいかな？』


コーヒーカップをテーブルに置き、真剣な目付きで私を見る中也



「そうだなここ数日の手前はおかしい、けど前よりは人間っぽさが出てていいんじゃねえの？」


『人間っぽさ？』



「勘は当たる、作った作戦は完璧、未来予測をしてくる、何を考えてるか読ませてくれねえ、貼り付けたピエロみたいな笑いかたをしてるよりは園Aの人間としての欲、葛藤が見れる

前より生きやすそうにみえるぜ」


あれ、ばれてたんだ
心から笑えてないことに



「普通の人間は母親が死んだら悲しむもんだからおかしくねえんじゃねえの？

まあおかしくてもAはAだから」


心にジンと暖かいものを感じた

空いた穴は塞がらなかったけど何か満たすものはある



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