猫との暮らし始まりました

35話 ページ37

…ここ最近疲れている気がする

あ、私じゃないよ秀がだよ?

人間に戻れてから二週間が経った

料理は基本的に私が作っているのだが、毎度の如く手伝ってくれるのでもう二人で作るのが当たり前になってきた

そして私がいないときの家事はほとんどやってくれるので分担も何もなくなってしまったのだが

勿論抗議したよ??


でもさ??「学生は学業が本分だろう?家事くらいやらせてくれ」と何とも素敵なイケボとともに言われてちゃったのよ

もうね無理

説得できなかったスパダリ無理


でもだからだろうか

ここのところ、ソファに座り何かを考えるようにしていることが多い

最初の方は考えているだけなのかなー、と思っていたのだがどうやらそうではないらしい


一昨日、また深く考え込んでいるようなので声をかけてみたのだが、全く反応しない

何度か声をかけたところで、はっと気が付いたような顔をしたのだ


…どう考えたっておかしい


だって彼は些細なことにも気が付くのだ

至近距離で、何度も声を掛けられなければ気が付かない程長考していたとは考えにくい


…前にもこんなことがあったような


レポートを作成する手を止め、考える

秀は前にお勧めした本が気に入ったのか何回か読み返している

本人曰く、「伏線探しが面白い」とのこと

少しだけ秀を見つめてみるが、気が付かない


前に秀がお疲れ気味だったのっていつだったっけ

人間に戻った時じゃない

もっと前

手探りで記憶を探る


…あ


ふと思い出し、固まる


そういえば、秀が猫から人に戻る直前もこんな感じではなかっただろうか


ぴしり、と

何かが嫌な音を立てた気がする


─もし


もし彼が『元の世界に戻る』としたら?

彼が戻ることを知らせるタイミングが


─今回のような感じだったら？

有り得なくはないだろう


「秀」


怖くなって声をかける

でも、答えてくれなくて

ひたすらに文字を目で追っている


「秀」


もう一度呼ぶと、顔を上げる


「Aどうした？」


秀が心配そうな目を私に向ける









・









・









─その時の私の顔は泣きそうな顔をしてたみたい

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