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20話 ページ22

しばしの沈黙

雨の降っている音が響く

先程のやり取りがまだ信じられなくて

でも心の中で妙に納得している自分もいて

ぐるぐると相反する考えが混ざり合う

目の前で下を向いている黒猫

彼の琴線に触れたことだけははっきりと分かった

その様子を見て、理解する

これは現実なのだと


でも、私は君みたいに頭は良くないからさ

どうしていいのか分からないんだよね

彼の真実を暴いて、それで?

…こんなにも息苦しい

だから

私の『気持ち』を言うよ

私は腹を括った


「…そっか」


少しだけ目を伏せる

目の前の黒猫は相変わらず目を合わせようとしない

今、目の前の彼は何を考えているのだろうか

追い出されると思っているのだろうか?

私に『嘘つき』だと罵られる?

気味悪がられる?



─見捨てられる?



「そうだったんだ、納得」


私は努めて明るい口調でそう言った

今までの重い空気を壊すように

黒猫は顔を上げた

黒猫と目線を合わせるようにしゃがむ

私はその翡翠色の瞳に笑いかけながら話しだす

お生憎様、私は見捨てることはしないし何より

─何が何でもしてやらないから、絶対に


「別に、君が人間だろうと猫だろうと別にどうだっていい」


優しく頭を撫でながら言葉を繋ぐ

本心だ

目の前にいる黒猫が、人間で、漫画に登場する『赤井秀一』だったとしても

─それが真実だと『秀』が言うのなら

私は信じるよ


「だって秀は私の『家族』でしょ?むしろ君の秘密が知れて嬉しいよ」

「教えてくれて、『信じて』くれてありがとう」


あの時

彼は私に『嘘』を吐くこともできたのだ

今の彼は言葉を話すことが出来ないのだから

ただ、黙っていれば良かっただけなのだ

それでも

それでも、教えてくれたのなら

私のことを少なからずは信じてくれているということだろう

─なら、彼を信じなくてどうする


言われてみれば納得する

あの、赤井さんが猫ね…

何だか面白くてついクスクスと笑う

いつの間にか雨は上がっていた


「これからもよろしくね、秀」


なぁん

いつかのように黒猫は鳴いた

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ぞーきん。(プロフ) - 沙代さん» コメントありがとうございます!そう言って頂けて何よりです!公式頑張らせていただきますね!! (2021年6月25日 8時) (レス) id: e337d5f43a (このIDを非表示/違反報告)
沙代 - 作者様の書く紳士で優しい赤井さんが好きすぎます、、!!笑笑公式頑張ってください!応援しています。(^^) (2021年6月25日 7時) (レス) id: b5b0d31a8f (このIDを非表示/違反報告)
さき。(プロフ) - 読みたいです!!!!!!!!!!!! (2021年6月24日 22時) (レス) id: bc9aead4c2 (このIDを非表示/違反報告)
やよい@小悪魔(プロフ) - 番外編読みたいっすわ!!!() (2021年6月24日 22時) (レス) id: bc461f0e02 (このIDを非表示/違反報告)
ぞーきん。(プロフ) - ねこみみさん» ねこみみさん閲覧ありがとうございます!あの方はきっと全猫が振り返るほど美猫ですよきっと…猫ちゃん飼ってらっしゃるんですか!?可愛いですよね…癒しです… (2021年6月22日 14時) (レス) id: 440cfac776 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぞーきん。 | 作成日時:2021年6月19日 16時

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