猫との暮らし始まりました

16話 ページ18

「…疲れた」


私は魂の抜けそうな顔で歩きなれた道を歩く

実はこのまえ出したレポートの評価が低く、若干憂鬱なのである

いくらな、底なしに明るいって言われてる私だって気分が沈む時くらいあるんだよ‼‼

あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ癒してほしぃよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ


「ただいま…」


いつもよりも覇気のない声が玄関に響く

なぁん

すると秀が寄ってきてくれる

いつもなら秀の頭を撫でるのだが、今日はそんな元気も残ってはいない

靴を脱ぎ、リビングへとふらふらと歩く

リュックを置き、ソファに倒れこむ


…はぁ、ガン萎え。急いだ割にはちゃんと仕上げたのに…

確かに期限を間違えていた私が悪いとは言え、そこそこのクオリティだったはずだ

だのに、評価が低く気分は沈んだままだ


ため息を吐きながらぼーっと天井を見る


なぁん


「うおっ、びっくりした」


鳴きながら私の顔を覗き込んでくる秀

全然足音しなかったな…

なんて考えながら、秀の顔を見る

相変わらずうちの子可愛いなぁ…

暫く見つめ合う

しかし、一向に退いてくれない

…どういうことだろう

私はとりあえず、秀の頭を撫でる


モフモフの毛並みは触り心地が良く、嫌なことを忘れられそうだ


暫く堪能する


…あれ、可笑しいな、いつもだったら逃げてても可笑しくないのに


秀はただただじっとこちらを見ているだけだ


嫌がる素振りも逃げ出す素振りも見せない

ただただ私にされるがままになっていた


そこではた、と気づく


…もしや、私が疲れているのを気づいててやってる…？


そうなのだろうか

確かに秀は賢いし、可愛いし、かっこいいし、美人さんだ

私の普段と違う様子を気にしてくれたのだったら


秀なりに元気づけようとしてくれているのなら



「秀はほんっとうにいい子だなー‼‼」


わしゃわしゃと先ほどよりも豪快に撫でる

それすらも秀は受け入れてくれた

すっかり元気が出た

秀の懐の広さに感動しつつ、私は秀に笑いかけた


「秀、ありがとう。元気出たよ」



なぁん、と


秀はいつものように鳴いた

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