◇見え【Em】 ページ2
昔から、感情を表に出さないタイプだった。
別にクールを気取ってた、とか、そんな事じゃない。
面白いと思っても、口角は上がらなかった。
悲しいと思っても、涙は出なかった。
いろんな人に笑え、泣け、と言われても、出来なかった。
そして、誰も相手にしてくれなくなった。
何も出来ない私は、世界に引きこもった。
本と言う世界に。
物語の中では、主人公は笑い、泣き、友はそれを見て一緒に笑ったり、泣いたり。
本の中だったら、何でも出来るような気がした。
いつしか、本は私の支えとなっていた。
そんな私は、今日も図書館へ向かう。
図書館はいい所だ。たくさんの本があり、それぞれ違う表情を味わえる。
静かなあの空間でいろんな表情を見ているのが、幸せなのだ。
図書館の司書さんとはもう友達だ。
そりゃ毎日と言ってもいい程借りに来ていれば、覚えられるもんだろう。
「今日もおいでなさったんですね。ごゆっくり。」
司書さんの柔らかい笑みに軽く会釈をし、館内を見て回る。
するとふと、知らない人が目に留まった。
色素の薄い髪に、薄茶色の目。本棚を整理している、という事は図書館に勤めているのだろうか。
いや、ここの図書館の人はほとんど把握しているつもりだ。
しばらく動いてない私を不審に思ったのか、司書さんがやって来て私の目線の方を見やる。
そして「ああ、」と分かったように言った。
「あの方は館長ですよ。確かにあまり表には出ないので、知らなかったのかもしれませんね。」
成程、それなら納得だ。
司書さんにお礼を言い、もう一度館内を見る。
たまには違う本を読んでみようか。
私は歴史の本が置いてあるコーナーへと進む。昔の歴史の人はどんな表情を見せてくれるのか。
私がどんなのにしようか迷っていると、肩をポンポン、と叩かれる。
振り向くと、館長さんが立っていた。
「何かお困りでしょうか？」
人のいい笑顔を向けられ、少し戸惑う。
『あ、いや、その…大丈夫です。』
館長さんは「そうですか…」と少し肩を落とすと、私にとって衝撃的な言葉を言った。
「凄い悩んでいるようでしたので…お手伝いできれば、と思ったのですが。」
『悩んでいる…？』
「ええ、遠くからでも分かりましたよ。」
私は表情が出ないはずだ、なのに。
「本であんなに悩めるなんて、よっぽど本がお好きなんですね。素敵です。」
顔が少し赤くなってんだ自分。
[見え【Em】]
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ねこかん(プロフ) - あーさん» ありがとうございます.........！読み返してる...！？だいぶ前からご拝読されて下さってるようで、感謝してもしきれません...！！更新頑張りますね！あー様も小説の更新頑張って下さい........！！！＾＾ (2019年6月14日 17時) (
レス) id: 44d9d7db35 (このIDを非表示/違反報告)
ねこかん(プロフ) - マーシャさん» わわ...！ありがとうございます！素敵だと言ってもらい光栄です。更新頑張りますね！マーシャ様も小説の更新頑張って下さい...！！！＾＾ (2019年6月14日 17時) (レス) id: 44d9d7db35 (このIDを非表示/違反報告)
あー(プロフ) - 短編集いつも楽しませていただいて、何回も読み返させていただいております…！次の更新楽しみにしていますね＾＾ (2019年6月14日 17時) (レス) id: ae45228fe4 (このIDを非表示/違反報告)
マーシャ(プロフ) - この短編集とっても素敵です…！次の更新楽しみにしていますね＾＾ (2019年6月14日 17時) (レス) id: cf5983d7fe (このIDを非表示/違反報告)
ねこかん(プロフ) - elさん» ありがとうございます。素敵な表現の仕方です…嬉しい限りでございます！お気遣いありがとうございますゆっくり更新ですが、これからもよろしくお願い致します。 (2019年5月1日 21時) (レス) id: d8f7b59ca9 (このIDを非表示/違反報告)
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