ネコになるヒト、ヒトになるネコ

ルフィ ページ13

｢A！｣


　定位置であるサニーの上から名前を呼ばれて、はーいと声を出す少女が一人。風でそよぐ手入れの行き届いた柔らかな髪は船員から甘やかされ愛されている証である。

　器用にジャンプをして呼んだ主であるこの船の船長、ルフィの元へ行こうとすると、勢いよく伸びてきた腕が身体に巻きついて、気がついたら膝の上に抱えるように乗せられている。髪の毛が乱れるほど頭を少し雑に撫でられても惜しみなく喉をごろごろと鳴らしてしまうのは、昔から、どんな姿でも変わらないその撫で方と伝わる愛情がどうしようもなく好きなのだ。

　一通り撫でて満足したのかしししし、と楽しそうに笑うから、身体を伸ばして額同士をこつんとくっつける。先程のルフィを真似るように、不慣れなりに目の前の麦わら帽子から覗く黒い髪を撫でてみる。するとルフィは丸い目をぱちくりと瞬かせてから砕けた笑みを浮かべた。


｢しし、くすぐってェ！｣

｢ルフィの真似、だよ｣


　やり返すようにルフィに頬ずりをされたAは、くすくすと嬉しそうに肩を揺らした。

　しばらくして身体を離したルフィの顔を覗くと、ずいぶん楽しそうな顔に小さく首を傾げる。


｢またAと喋れるのすっげェ嬉しい！｣

｢くふ、わたしも｣


　素直にそう告げると、ルフィはさらにニッと笑った。

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