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「ねぇ」
「ん？」
「樹くんってさ、和泉さんのことが好きらしいよ」
授業と授業の間の10分休み、引き出しから教科書を取り出していたら後ろから肩を叩かれた。振り向けば、クラスでも特段ゴシップ好きな友人がニヤニヤした顔で話す。
「ふーん。田中くんがそう言ってたの？」
「いや、それは知らないけど、一緒に帰ってるとこ見た人がいるらしい」
「そうなんだ」
よく聞く。田中くんの女の子関連の噂話。
廊下側の一番後ろの席をチラッと見たら、田中くんは机に伏せて寝ていた。
「でも和泉さんってB組に彼氏いるじゃん？」
「あー、うん」
「だから、その彼氏から奪おうとしてんじゃないかーって言われてんの」
「そうなんだ」
どうしても、こういう類の噂話は好きではない。無意識に顰めっ面になっていたのか、友人はものすごく不思議そうな顔をしていた。
「ねぇAさ、なんでそんな興味なさそうなの？天下の樹くんの話だよ？」
天下の樹くん。確かに、田中くんは男女問わず友達が多いし、あの脱力感のあるカッコよさでみんなの憧れの的、という感じだ。
だけど私は、田中くんとそれほど話したことないし、チャラいイメージが蔓延る彼だけど、本当のところは分からないから、何を言われても同意しかねる。
「だって、全部憶測でしょ？」
「でも火のないところに煙は立たないよ」
「火がなくても、煙は立つよ」
それは、私が身をもって体感してきた。釣れない私に、「つまんないのー」と言ってどこかへ行ってしまった友人を見送りながら、もう一度田中くんに視線をやる。
「あ、」
ふと目覚めた彼と目が合ってしまって、慌てて逸らした。今、田中くんはどんな顔をしているのだろうか。分からないけど、田中くんの話を聞いていた手前、ちょっと気まずい。
友人は他のクラスメイトと合流した途端、また彼の話をしているらしい。「樹くんのお母さんって昔ヤンチャだったらしいよー」「遊び癖って親子で似るのかなぁ」なんて嘘が本当か分からないことを言い合って、盛り上がっている。
きっと、田中くんに聞こえてると思う。どんなにヒソヒソと話していたって、その視線とか、空気とかで、なんとなく自分の噂話をしてるなって、分かるものだから。
もう一度田中くんの席に視線をやれば、いつの間にか彼はいなくなっていた。
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Ne子(プロフ) - aさん» 嬉しいです…ありがとうございます！！ (2月29日 21時) (
レス) id: 58b12061de (このIDを非表示/違反報告)
a(プロフ) - Ne子さんのお話全部可愛くて面白くてきゅんきゅんします！これからも更新楽しみにしてます！ (2月27日 0時) (レス) id: 4b25b1d56f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Ne子 | 作成日時：2024年2月2日 0時
