光芒 II (ページ8)

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「もう来なくていいから、放っといて」

Aさんに謝ることもできず、何もないまま日々は進んで、今まで以上に抜け殻のように生活をして数日。夕方、学校帰りに、いつものようにチャイムを押した海人を、俺はいつもより冷たい言葉で押し返した。

「待って！」
「無理」

Aさんからの連絡も、あの日から途絶えていた。きっと、俺に幻滅したんだと思う。これでいいんだ、もう。初めに戻るだけ。

「本当に待って、今日は！」
「……なに」
「俺からほっくんに報告があるの」

なのにこいつは、閉まりかけた扉を足で阻止してから、なんてことない顔で笑うから、拍子抜けしてしまった。そうだった。海人は俺と違って、そうそう怯まない。

「はぁ？」
「ちょっと待ってね」

結局海人は半ば強引に部屋に上がっては、俺もかつて使っていた学校指定の革のスクールバッグの中を、ゴソゴソとしている。3年弱使ってきた歴史が、革のくたっと加減から窺えた。そして、封筒から一枚の紙切れを取り出して、俺に渡してきた。

「なに、これ」
「読んで」
「……合格、通知書？」
「うん。俺、芸大に行くよ」
「うん……え？」
「油絵で、芸大に受かった」
「いや、うん。海人、確かに絵はすごいけど、芸大？」
「うん。前までは、法律学びながら絵も描いていこうと思ってたんだけど、やっぱり俺はこの道に進みたいから」

自分の進む道について話す海人は、どんな瞬間よりも生き生きとしていた。対して、海人の光る瞳の中に映る俺は、情けない顔をしている。