光芒 II (ページ5)

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「一緒に食べようよ」彼はそう言いながら、迷うことなく俺の隣に腰掛けた。突然詰められた距離に圧倒されて、丸椅子に座り直す。彼から少し、距離を取るように。

ジェシーさん、と言うらしい。樹が「Aちゃんがそう呼んでいた」と言った。まずAさんのことを「ちゃん」付けで呼ぶ樹に腹が立つけれど、今そんなことを気にしている場合ではない。

「北斗くんは、大学生？」
「一応」
「そっか、若いねー」

丁度2人分のラーメンが運ばれてきて、会話を避ける為にただ麺を口に放り込む。なんだかいつもより、味覚が機能してくれない。そんな俺を見て「豪快にいくねー」と笑って、シャツを腕まくりしている様が大人の男性、という感じで、適当なパーカーにジーンズの俺がより一層惨めに感じた。

この人が、Aさんと、あんな事や、こんな事をしてきたのか。この人がAさんを振って、あれ程泣かせたのか。それくらい、この人はAさんに好かれていたのか。考えたくもないことがグルグルと頭を巡り、今にも叫び出したくなるのを抑えて、一心不乱にラーメンを食べる。咀嚼に集中して、何も考えられないように。そう努力すればするほど余計に、余計な想像は膨らんでいく。

「北斗くんさ、」
「……？」
「Aのこと、好き？」
「…はっ、？え」
「へへ、ごめんごめん」

突然意味の分からないことを言われて咽せてしまった俺に、ジェシーさんは笑いながら水を手渡してくれる。

「いや、Aの話題になると顔色が変わるから」
「へ」
「好きなのかなって」
「いや、あ、………すいません」
「なんで謝るの」

アハハって、口を思い切り開けて笑うと子供っぽく見える。そんなところも、今は気に触る。これが所謂ギャップ、ってやつか、なんて。