光芒 II (ページ3)

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我に帰った時には、いつものラーメン屋、カウンターの端に腰掛けていた。脳内の糖分が足りなくなるくらい思考を巡らせていた？確かにそうかもしれないけれど。それにしても、暖簾をくぐった時の記憶すらあまりないのは、自分で自分が心配になる。俺はそれほど、Aさんのことが、まだ……

「あ、」

思わず声を出してしまった。ふと顔を上げれば、L字になっているカウンターの1番奥に、スーツ姿のとんでもなく顔の整った男性が腰掛けているのが目に入った。あれは、Aさんの元カレ、いや、……彼氏だ。俺がマンションの下で見たシルエットと同じ。間違いない。何ともタイミングの悪い出会いだ。

店内には俺とその男性と、テーブル席にカップルが1組いるだけだから、今発した声が届いてしまっていないか不安になったけれど、彼は依然としてスマホをいじっているから、ホッとしてお冷を流し込む。

「北斗知ってんの？」
「は？なにが」
「奥に座ってんの…..Aさんの元カレ」

テーブル席のカップルに注文を取ってカウンターに戻った樹が、俺の不自然な目線に気づいたのか耳元でヒソヒソと話しかけてくる。ていうかやっぱり、あの人が元カレか、いや、…今の彼氏か。

「相当なイケメンよな、背高いし」
「…俺を揶揄ってるの」
「ちげぇよ、俺は北斗を応援してんだよ」
「嘘つけ」
「Aちゃんと付き合うなら元カレのことも把握しといたほうがいいだろ？」
「いや、もう………」

もう、砕け散ったんですけど。そんなことも知らず、樹は馴れ馴れしく俺の肩を叩く。彼は店で何回か顔を合わせただけなのに、まるで友達みたいに接してくる。まぁ、嫌な気はしないけれど、こういうお節介なところは、やめてくれと思う。