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「えー、やだよ。仲良ければ良いほど、これから何度もそいつと飯食いに行くって考えたらさ、食事の時の拘りとか許せないことってある程度共有しておいたほうがよくない？まあ食事に関わらず」
「お互い無理したくないじゃん？」
樹くんの問いかけに、どう答えたらいいか分からなくてただ見つめるしかなかった。過度な無理は、結果的に相手を無理させることになる。身に染みて実感した、まだ新鮮な過去がある。
「我慢し続けたら、いづれどっちか壊れるよ。なら、ちょくちょく喧嘩したほうがいいと思うの俺は」
無理して、無理させて、壊してしまった人が居る。
「まぁ、今腹立てても結局はさ、俺アイツのこと大好きなんだけどね」
「大好きなのに、喧嘩するの？」
「好きだから喧嘩すんじゃねぇの？」
「……」
喧嘩中の友達のことを大好きだと言える樹くんが、私なんかよりずっと大人びて、輝いて見えた。
「Aちゃんは、北斗と喧嘩したの？」
「喧嘩っていうか……うーん。なんだろうね」
喧嘩、ではないと思う。ただ拒絶されただけ。喧嘩って、どうやってやるのだろうか。どうやったら、伝わるのだろうか、分かるのだろうか、本当の気持ちが。
「この間凄かったんだよ。この店が修羅場になったの」
「え、なに？」
「偶然、ジェシーさんと北斗がご対面してさ、色々話してたよ。Aちゃんのこと」
「えっ……嘘でしょ」
「マジ。俺もさ、まぁ気は遣えるから、2人の話あんま聞かないようにしてたけど、北斗がAちゃんのこと好きって言ってたのだけは、確かに聞いちゃった」
いつかも見た悪戯な笑顔。そんな大切な部分だけ奇跡的に耳に入ることなんてないんだから、全部聞いてたでしょ？とツッコミたくなったけれど、やめた。それより、北斗くんはまだ私のことを好きでいてくれていることが、嬉しい。
「喧嘩、してみたら？」
「喧嘩…」
「っていうか、話し合い？」
「そうだね」
「2人思ってること全然言わなそうじゃん。だからなんか拗れてんじゃねぇの？」
思ってること、全部言えば良いんだと思う。感情に乗せて。間違った伝わり方をしてしまったら、その場で違うと訂正すれば良い。そうやって、きっと、分かり合っていく。
「樹くんは、友達と仲直りしなね」
「あは(笑)うん。するする」
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作者名：Ne子 | 作成日時：2023年10月1日 23時
