光芒 II (ページ1)

今日:41 hit、昨日:25 hit、合計:41,485 hit

5 _滲む色、浮かぶ色ページ1

.

このまま終わりにしようと思った。

俺からの着信履歴に気づいたのか、Aさんから何度か電話が掛かってきた。俺はそれに気づいていながら、無視をした。そのままAさんの連絡先を消して、関わりを断つ。俺は、Aさんに出会う前の落ちこぼれた生活に戻る。アイツの言ってた通りだ。

ただ一つだけ、Aさんに触れた瞬間の鮮明な記憶が消えてくれない。それだけが今は憎くてたまらない。

固定シフト制のコンビニのバイトも飽きてきたから、辞めようかな。大学、親、将来、全部どうしようか。何がしたかったんだっけ。バイト終わり、裏口の扉を開いて外に出る。ちょっとした段差に躓いてしまっただけで、大きな溜息が出る。

「北斗くん」
「え……」
「会いたかった」
「なんで」
「電話も出てくれないし、メッセージも見てくれないから。だから、待ってた」
「……」
「話したい」
「……」
「北斗くん、」
「俺は、話したくない」

辛い。辛い。辛い。拒否したくないのに、そうしなければ俺が壊れるから、近づいて来るAさんの距離と同じだけ、俺も後ずさる。

「なんで、避けるの？」
「別に」
「私が何かしちゃったなら、」
「……嘘、ついてたんだ」

言うつもりはなかった。けれど、込み上がってきてしまったものは、自分でもどうしようもなかった。

「嘘、？」
「高校の同級生と飲みに行くって言ってたのに、本当は元カレと会ってたんだね」
「え？何言ってるの」
「マンションの下で抱き合ってたとこ、見た」
「あれは、」
「ごめんね、2人の時間だったのに」

口から出る言葉に全部棘がつく。Aさんのことは傷つけたくない。でも、Aさんからの言葉を受け止められる気がしない。それがたとえ否定あっても。