Cheers【2】 (ページ9)

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外から入ってくる風が肌を撫でる。今夜は風が涼しくて、冷房をつけずに縁側に続く襖を開きっぱなしにしていたのだ。後少ししたら寝ようかな、明日も仕事だし、なんて曖昧に考えていたら、玄関のドアが開かれた音がした。飼い主に従順な犬の如く、玄関まで走る。

「おかえり」
「ただいまー」
「お疲れ様」
「ありがとう」

靴を脱いで上がった途端に、ジェシーくんは私を抱きしめる。久しぶりの感覚に、泣いてしまいそうになった。労いの気持ちを込めて頭をふわっと撫でれば、ジェシーくんが首に顔を埋めるように頭を動かすから、サラサラの髪が首筋を擽ってくる。

「起きててくれたの」
「うん。待ってた」
「何してたの？」
「さっきまで北斗とトランプしてた」
「そうなんだ」
「北斗が付き合ってくれて」
「俺もやりたかったな」
「今度やろう？」
「うん」

少し俯いた後、ジェシーくんは私に触れるだけのキスをする。

「……なんか、やだな」
「ん？」
「北斗の前だと、俺の知らないAがいると思うと、妬ける」

何を心配しているのだろうか、と見つめれば、「ごめんね」なんで謝られてしまった。そして、いつもよりゆっくり唇が触れる。玄関なのに、なんて思う余裕もなくそれは深くなって、ジェシーくんに身を委ねようと腕を掴んだところで、ジェシーくんは何かを思い出したようにパッと離れた。

「明日も早く出るんだ…」
「あ、そっか。じゃあ早く寝ないとだ」
「うん。Aと一緒に寝たいけど、我慢する。多分寝れなくなるから」
「そうだね」
「来週の花火大会の為に、がんばるね」
「うん。私も」

2人で一緒に行こうねと約束した、花火大会。ジェシーくんがどんなに忙しくて、なかなか会えなくても、もうすぐその日だから頑張ろうと、頑張れると、私も思っていた。