Cheers【2】 (ページ6)

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北斗は呆れた表情で、溶け始めたかき氷をスプーンで混ぜる。器の外側に垂れる水滴が、机上に置いていた手のひらに落ちて初めて自分が前のめりになっていたことに気づいた。恥ずかしくなって、頭を冷やすためにもかき氷を口に放り込む。

「料理人の卵でしょ？付き合っちゃいけない3Rじゃん」
「それをいうならBでしょ」
「いーや、最近はRらしいよ？」

北斗は、昔から冗談を真顔で言うから、何度か本当に騙されてしまったことがある。でも段々わかってきたんだ。北斗は嘘を言う時、全く目を合わせない。

「じゃあ他2つは何？」
「え？……忘れたけど」
「テキトーなこと言わないでよ」

歯切れが悪い感じで、頬杖をつく北斗。今までお互いの恋愛に干渉することはなかったのに、久しぶりに会ったと思えば突然心配する素振りを見せられて、変な感じだ。

てっきり北斗は、恋愛的な話題が嫌いなのかと思っていた。誰々が誰々と付き合って、とか、誰々に告白されて、とか、学生時代に他愛もない会話の中で出てくるその類の話題には、全く興味を示さなかったから。

「あーあ、昔はもっと騙されてくれたのに」
「いつの話？」
「あ、昔の話しようか」
「えー、昔かぁ」
「俺はね、アレが1番心に残ってる」
「どれ？….あ、」

「「花火大会」」

声が重なって、北斗は嬉しそうに笑った。あの花火大会が、北斗の中でも大きな思い出だったということを今知った。