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「ジェシーさんじゃないっすか！」
そのページの真ん中には、確かにジェシーくんが写っていた。
「ジェシーくん、だよね」
「えっ間違いないですよ。Aさん！！」
「ちょっと、待って、一回静かに」
森本は、私以上に興奮しながら記事を読んでいる。
「恵比寿にお店出したんですって！」
「…お店」
「読んでください！」
半ば押し付けられるように雑誌を受け取って、端から読み始めた。
若い方も、1人でも来やすい空間を作りたい。
屋根の下で、縁側で裸足のまま誰かと話すような、和の安心感も取り入れたい。
彼が紡いだ言葉の節々に、明確な思い出が浮かんでくる。
「これ」
「ん？」
「これ！」
「待って急かさないで」
森本が指で雑誌の端っこのテキストを指差す。破れてしまいそうなくらい強く。
— 次の目標は？
大切な人に会いたい。これさえ叶えば、俺の人生にはそれ以上何もいらないです。
「Aさん」
「……分かってる」
森本にティッシュを一枚渡されて初めて、自分が今泣いていることに気づいた。
肩に乗った森本の手の重みが、私が背負ってきた一年の重さを物語る。なぜ最後まで、連絡してくれなかったのだろうか。そう考えて、思い出した。出会ったあの日のあの会話。ジェシーくんは、私が雑誌で見たお店に行くという趣味があることを、覚えていてくれたのだ。
それにしても、余りにも挑戦的でロマンチックなやり方だ。私がこの雑誌を見なかったら、どうするつもりだったんだろう。いやでも、こうして雑誌の中のジェシーくんに出会ってしまったのだから、その他のIfになんの意味もない。それだけが現実で、それが運命なのだ。
「今日は絶対定時で上がりましょうね」
「今日忙しいけど…」
「任せてください。俺は終わらせます！」
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作者名：Ne子 | 作成日時：2023年8月14日 0時
