Cheers【2】 (ページ32)

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「Aさん。今大丈夫ですか？」
「うん大丈夫だよ。良いの見つかった？」
「はい。ただあくまで俺的になんでAさんにも確認してほしくて」

デスクに戻ってパソコンと向き合っていれば、森本に声をかけられた。強めにクーラーが効いた社内でも暑そうにしている森本は、持っていた雑誌を私に見せてくれる。あるライフスタイル雑誌の、5年前の8月号だ。なぜこんな古い雑誌を読んでいるかって、次のクライアントの希望として、過去の様々な広告を取り入れた映像を作りたいという希望があり、その商品が載っている雑誌を、片っ端から読んでいたのだ。

「どうですかね」
「うん。すごく良いと思う」

そのクライアント企業が売り出すコスメと、世界的に有名なデザイナーとがコラボした雑誌広告は、当時も話題になったものだった。

「一応最新のもあります」
「あー、ありがと」

森本が渡してくれたそのライフスタイル雑誌の最新号をペラペラとめくっていく。案出しの段階では、雑誌のページのレイアウトを見ていくのも参考になったりするから、私はよく……

「さっきの、候補に入れておきますね」
「…あ、うん…」
「どうしました？」
「いや、」

ふと開いたページに、目が離せなくなった。
イケメンシェフスペイン料理新進気鋭
目立った文字を追いかけるだけで、精一杯だ。

「え、これ、Aさん！」
「……うん」

不自然な私に気がついたのか、森本は私の見つめるページを覗き込んでくる。