Cheers【2】 (ページ29)

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「ジェシーが旅立つ前」
「え？」
「ジェシーに、呼び出されてね」
「……うん」
「Aのことよろしく、って言われたんだよね」
「それは、どういう意味？」
「俺も深くは聞けなかった。なんか深刻な面持ちだったし」

北斗は、遠くを見つめたままだ。

「私だけじゃん。ジェシーくんから何も言われてなかったの」

記憶が遠くなればなるほど、線が曖昧になって、悲観的になってしまう。私の送ったラインには、いつになっても既読がつかない。毎日確認してしまうくらいには、忘れられないのに。

「Aが避けてたんだろ？」
「……後悔してる。全部」

もう会えないのなら、ジェシーくんの夢が叶わないのなら、ジェシーくんが他の誰かと幸せになるのなら、いっそのこと出会わなければよかった、なんて思ってしまうのだ。

「連絡してみたら」
「……したって、返ってこない」

北斗に、私のことよろしくって、何それ。私の気持ちを無視して、他の人と幸せになれと言われてるようだ。

「はぁほんと、夏みたいだなあいつは」
「夏？」
「来たと思えば連日最高気温更新してさ、俺らを翻弄させて、去ったかと思えばスパッと消えてくれない。残暑みたいに」
「夏よりタチ悪いよ」
「なんで？」
「きっと秋になっても、冬になっても、消えてくれない」

もう終わり。一夏の、楽しい恋だった。そう思ってみることは簡単でも、心や身体はまだあの熱量を持ったまま。きっと、取り残されていくんだ。