Cheers【2】 (ページ26)

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「ジェシーはね、」

ジェシーくんは、アメリカ人のお父さんと日本人のお母さんを持つ、ハーフであること。それは、ジェシーくんから直接聞いた。

それ以降の、マリさんの話は、私の全く知らないジェシーくんについての話だった。

ジェシーくんのお父さんはアメリカで会社を経営していて、所謂社長らしい。そしてジェシーくんは、その会社の跡取りを担う息子。お父さんはもちろんジェシーくんに会社を継がせたいと思っている。でも、ジェシーくんは小さい頃からシェフになりたかった為、大学卒業後お父さんの反対を押し切って強制的に日本に来た。それは、ジェシーくんが憧れていたシェフの方が日本に居たから。だから、強制的に、といっても無断で来たわけではなく、2年間猶予をくれという約束で、ジェシーくんは日本に来た。

「ジェシーくん、小さい頃は日本に居たって言ってました」
「うん。そう。中学校くらいまではこっちでお婆ちゃんと暮らしてたみたいよ。だから、日本語も流暢」
「そう、なんですね」

次々と明かされる事実に、頭がパンクしてくる。

「じゃあ、その、約束の2年だから、ジェシーくんはアメリカに？」
「ううん。まだ2年経ってないわ」
「じゃあ、」
「緊急事態があったの」

ジェシーくんのお父さんが、病に倒れたと連絡があり、ジェシーくんは緊急でアメリカに旅立ったというわけだった。お父さんは一命を取り留めたものの、もうバリバリ働けるわけではないため、早急に跡取りの決定と育成が必要になる。もしかしたら、向こうの許嫁とも結婚が急がれるかもしれない。そのままジェシーくんが日本に戻ってくるのか、夢を叶えられるのか、分からない、という。