Cheers【2】 (ページ20)

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ジェシーくんは料理のコンクールを終えて、比較的落ち着いている日々だ。詳しいことは聞いても分からなかったけれど、優秀な成績を残したのは確からしい。

「本当にもう出ていくの？」
「お世話になりすぎたくらいだよ」

何度目か会話が脱線したが、また画面のスクロールを始める。そう、いつまでもこの家にお世話になるわけにもいかないから、私は一人暮らしの物件を探しているのだ。ジェシーくんは時々邪魔をしてくるけれど、一緒に探してくれている。

「ここはー？」
「どれ？」
「駅から徒歩5分の2LDK」

ジェシーくんのスマホの画面を覗き込めば、1人で暮らすにしては大きすぎる間取りの部屋が映し出される。探してくれているのは有難いけれど、さっきから全く参考にならない物件ばかりだ。

「だからさ、こんな広くなくていいんだって」
「そう？広い方が良くない？」
「そりゃあ広ければ広いほどいいけど、現実的に考えて」
「現実？」
「ジェシーくんさっきからふざけてるでしょ」
「ふざけてないよ。俺は大真面目」
「私、一人暮らしだからね？それを考慮して、」
「じゃあさ、二人暮らししようか」
「え？」

驚きすぎて、身体ごと振り向いた。ジェシーくんはニコッと笑う。

「なんてね」
「……やめてよ、冗談は」

変にドキッとしてしまったじゃないか。恥ずかしい。

「冗談じゃないけど」
「……」
「今は厳しいけど、近い将来、2人で暮らしたいって思ってるよ」

ね？と小指を差し出されて、素直に私のを絡める。幼稚園児みたいな約束の仕方だったけれど、強い効力があるような気がした。

「うわっ」

再び物件探しをしようとした私を抱き寄せて、ジェシーくんは勝手にパソコンの画面を閉じる。

「次こっちね？」

途端に視界が、ジェシーくんでいっぱいになった。物件探しは、また後回しだ。