Cheers【2】 (ページ18)

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「とりあえず席探そっか」
「うん」
「空いてるかなぁ。あ、足痛くない？大丈夫？」
「うん。大丈夫」

ジェシーくんに手を取られれば、ちょっとの強がりも、今は苦痛でも何でもなかった。心なしか、さっきより足の痛みは薄れている。広場に並べられた幾つものパイプ椅子の列の間を歩いた。そして、1番後ろに2人分空いている席を見つけて腰掛けた。

「俺が来なかったら、北斗と一緒に花火見るつもりだった？」
「うん。だって花火見に来てるし」
「そうだよね。あれは、知らないか」
「あれ？」
「ここの花火ね、想いを寄せてる人と一緒に見ると、必ず結ばれるって言われてんの。だから、Aが北斗と一緒に見るのは、正直嫌だなって、思ってた。バカな噂だってわかってんだけどね」
「あぁ、それ」

ジェシーくんの膝の上にある繋がれた手が、もっと強く握られる。私もさっき、その噂を信じて、ジェシーくんと見たかったな、と何度目か強く思っていた。

「さっき、小学生くらいの男の子にその噂聞いて、ジェシーくんに会いたくなった。もっと会いたくなった」
「俺ら、子供だね(笑)」
「そうだね」
「でもそういうのが、割と勇気をくれる気がするよね」

花火が、あと1分で打ち上がるというアナウンスが聞こえた。ただのBGMとして。周りの人の声も、誰かが草の上を歩く音も、カメラのシャッター音も、全部耳を通り抜けていく。

「A？」
「ん？」
「好きだよ」

ジェシーくんの声だけが、私の真ん中で揺れる。

「だから、付き合おっか」
「……」
「一人前になってからこういうこと言おうと思ってたんだけど、でも、Aにこれ以上寂しい思いさせたくないし、誰にも取られたくないから、だから、付き合ってほしい」
「……うん。私も、大好き」

バーンという音共に、夜空に大きな花が咲いた。それを皮切りに、連続して様々な色形の花火が夜を彩る。今、観客の視線は全て夜空にあった。

その空間で、潤んだ瞳のジェシーくんと目が合った。街灯に気づかれない薄暗闇の中、私たちは、列の1番後ろの席で、ただ触れるだけの、でも心の奥にはちゃんと触れられるような、短いキスをした。